「もし、俺が死んだらお前はどうする」

突然、先生がそんなことを言った。いつもと変わらない日、いつもと変わらない散らかった保健室、いつもと変わらない先生の声。

「どうしてそんなことを言うんですか」
「ん?いや、特に理由はないが、」
「じゃあ言わないでください」

腹が立った。今幸せで仕方がないのに、先生がいなくなった時のことなんて考えたくない。あれ、目の前が霞んできた。

「…泣くな。もう言わないから」
「泣いてないです」
「…たくっ」

そう言うと先生は立ち上がって私のところまで来て抱き締めてくれた。あったかい。
ねぇ、先生。
死ぬなんて言わないで。
私は先生がいない日々を想像したくない。この幸せな日々をなくしたくないの。この温もりをなくしたくないの。

「本当にお前はかわいいやつだな」
「っ先生!私、怒っているんですよ!」
「はいはい、もう言わないから、な」
「…」

頭を撫でる手が温かくて安心する。その動作からは先生の愛が滲み出るほど感じられる。

「先生が死んだら、恨みます」
「その話はもうしないんじゃないのか」
「質問に答えてあげたんです」
「あぁ、そうだな」

そういって、どちらともなくキスをした。
そして2人で笑った。先生、ずっと私と笑っていてね。





(私に愛をくれた人)




100523/燕樹
天野月子 骨 より






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