少しイラッときた。

でも、言わなかった。そんなこと彼女に言ってしまったら彼女に幻滅されてしまいそうだったから。

彼女―夜久さんと僕は所謂恋人同士である。こんな男だらけの学校で僕のことだけを特別な目で見てくれたのはとても嬉しいことである。

が、
やはりこんな男ばかりの学校で心配はことは多い。彼女を想っている人が多いのは承知の上であったが、見ていてハラハラするし、嫉妬なんて日常茶飯事だ。今日だって、今友人の一人である一樹にさえ、嫉妬している。(いや、一樹が夜久さんを好きなのはなんとなくわかっていたけれど、)



「金久保先輩?」
「え、あ、どうかした」
「いえ、ぼーっとしてたので、大丈夫かなって」
「ごめんね、心配させちゃって。なんでもないから気にしないで」

せっかく彼女が隣にいてくれるのに、また考えてしまった。いつもどうりの笑顔を見せるが、何故か彼女はムッとしてしまった。

「夜久さん?」
「…先輩はいつも私のこと思って笑顔を見せてくれますよね。嬉しいけど、…ちょっと嫌です」
「え、どうして」
「…私達、こ、恋人同士なのに先輩何も言ってくれないです。私じゃ頼りないかもしれないけど、もっと頼ってほしい、です。」
「夜久さん…」
「…」

そこからは少し沈黙が続いた。正直、言えば楽になるはずなのに、嫌われるかもしれないという不安との方が強い。
でもその時、そっと手を握られた。温かく小さな手だった。

「さっき、一樹と話してたでしょ」
「あ、はい。ちょっと生徒会の仕事で用事があったんで、」
「その時の君がさ、あまりにも楽しそうだったんだ。僕といるときはあんなに笑わないのに」
「…」
「だからイライラしてた。君は僕のことが好きなはずなのに、信じられない自分に」

かっこわるいよね、て言おうとしたが、それは途中で遮られた。彼女が急に抱きついてきたのだ。

「不安にさせてごめんなさい…」
「…」
「でも、私には金久保先輩だけだから、」




僕のうずくまる場所
(僕は君のことで悩み君にだけ打ち明ける、そして君だけがこの想いを受け止める)




100318/燕樹
title by 濁声





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