中東の小国、クルジス共和国。石油の輸出規制をかけられ、存続の為に隣国と内乱を繰り返す。
そんな中、俺達はこの世に生を授かった。一卵性双生児だった。両親も俺達を見分ける事は出来なかった。
一卵性双生児というのは、一つだった受精卵に何かが起こって二つに分裂し、形を成したもの。
俺達は元々一つだった。だから、俺達は二人で一つだ。そうやって俺達は生きてきたんだ。


「ソラン」
「今は刹那だ。朔夜」
「他には誰もいない」
「…判った。シオン」


ソレスタルビーイングの施設内にある、とある一室。年の頃は15かそこらだろう。幼い顔立ちの瓜二つな少年が二人、其処にはいた。
シオン=イブラヒムとソラン=イブラヒム。コードネームは朔夜=F=セイエイと刹那=F=セイエイ。
ファミリーネームから判るように、彼らは血の繋がった兄弟であり、容姿から判るように双子である。
一年前、14歳という異例の若さで二人はガンダムマイスターに選ばれた。朔夜はラジエル、刹那はエクシアのパイロットとなった。
無表情を貼り付けた彼らは、意図してそうあるのではない。恐らく彼らは知らないのだ。笑うことも、泣くことも。
幼い頃から戦場にいた彼らは、愛情というものを微かな片鱗しか知らなかったのだ。そんな幼年期が、希薄な感受性を作り上げた。
理解し得ないものを持ち得ることなど、出来はしない。
そして、彼らは願った。戦争など無くなれ、と。だからこうして行動するのだ。


「シオン」
「何だ?ソラン」
「シオンはオーガンダムを見ていなかったのか?」


刹那はオーガンダムによって救われた。それがきっかけでソレスタルビーイングを知り、入ったといってもおかしくはないだろう。
あの時シオンは傍にはいなかった。けれど自分と共にソレスタルビーイングに来たのだから、何かしらきっかけがあると思ったのだ。
自分はオーガンダム。ではシオンは?


「…俺は見なかった」
「じゃあ何故…」
「ソランがいるから」


刹那の疑問に、朔夜は即答してみせた。
朔夜にとって刹那はたった一人の弟であり、半身でもある。共にいる理由など、彼にはそれだけで十分なのだろう。


「それに…ソレスタルビーイングの理念は、俺の意志だ」













騒々しいきらめきに微笑みももう尽きる

(戦争根絶)
(そうだ。戦いのきらめきなんて、俺はいらない)