不思議な奴。
僕が彼に抱いた第一印象は、それだった。
漆黒の髪に、金晴色(きんいろ)の瞳。
本来ならば、在り得ないはずの色彩を持つ彼。
けれど、彼は違和感一つ感じさせない。
とても、不思議だと思った。






◇      ◇






「雨竜」
「どうした」
「雨竜の眼鏡って、度強い?」


急に質問してくるから何かと思えば、返ってきた妙な答えに、つい溜息が出た。
それと同時に、いつものように眼鏡のブリッジを押し上げる。


「それほどでもないと思うが」
「じゃーちょっと貸して」
「あっ、おい藤代!」


石田の隙をついて眼鏡を奪い、慧斗はそれをかける。
しかし、眉間に皺を寄せて、すぐさま外した。眩暈がしたのか、ぐらりと頭が揺れ、目元を押さえた。
はあ、と二度目の溜息を零し、石田は慧斗から眼鏡を奪い返した。


「慣れてないくせにかけるからだ」
「や、だって興味あったし」
「そういう問題じゃないだろう」


早くも三度目の溜息が出た。ああ、幸せが逃げていく。
といっても、元から逃げていくだけの幸せなど、無いかもしれないが。
先程から、慧斗はぶー、と言いながら不貞腐れている。男のくせに、そんな仕草が似合うのは何故だろう。
ちょっとでも可愛いとか思った自分はおかしい。絶対におかしい。


「そういえばさ」
「何だ?」


不貞腐れていた慧斗が復活(?)し、思い出したかのように話しかける。
立ち直るのが早いな、などとくだらないことを考えながら、石田はそれに応える。


「雨竜って眼鏡かけてるとかっこいいけど、外すと可愛いね」


…僕がおかしい訳じゃない。藤代がおかしいんだ…!













金晴眼眼鏡

(くす、可愛いな、雨竜は)
(僕じゃなくて藤代が…!)