不思議な奴。 僕が彼に抱いた第一印象は、それだった。 漆黒の髪に、 本来ならば、在り得ないはずの色彩を持つ彼。 けれど、彼は違和感一つ感じさせない。 とても、不思議だと思った。 「雨竜」 「どうした」 「雨竜の眼鏡って、度強い?」 急に質問してくるから何かと思えば、返ってきた妙な答えに、つい溜息が出た。 それと同時に、いつものように眼鏡のブリッジを押し上げる。 「それほどでもないと思うが」 「じゃーちょっと貸して」 「あっ、おい藤代!」 石田の隙をついて眼鏡を奪い、慧斗はそれをかける。 しかし、眉間に皺を寄せて、すぐさま外した。眩暈がしたのか、ぐらりと頭が揺れ、目元を押さえた。 はあ、と二度目の溜息を零し、石田は慧斗から眼鏡を奪い返した。 「慣れてないくせにかけるからだ」 「や、だって興味あったし」 「そういう問題じゃないだろう」 早くも三度目の溜息が出た。ああ、幸せが逃げていく。 といっても、元から逃げていくだけの幸せなど、無いかもしれないが。 先程から、慧斗はぶー、と言いながら不貞腐れている。男のくせに、そんな仕草が似合うのは何故だろう。 ちょっとでも可愛いとか思った自分はおかしい。絶対におかしい。 「そういえばさ」 「何だ?」 不貞腐れていた慧斗が復活(?)し、思い出したかのように話しかける。 立ち直るのが早いな、などとくだらないことを考えながら、石田はそれに応える。 「雨竜って眼鏡かけてるとかっこいいけど、外すと可愛いね」 …僕がおかしい訳じゃない。藤代がおかしいんだ…! |