ある朝、目を覚ました僕の視界に入ってきたのは、君がいない色褪せた世界だった。
愛しい君がいないだけで、あんなに色付いていた世界が、こんなにもモノクロに見える。
ああ、何故僕はあの時、君の手を離してしまったんだろう。
ああ、どうして僕はあの時、君をこの腕の中に閉じ込めておけなかったんだろう。
あんなにも君は、哀しげな瞳で僕が引き止めるのを待っていたというのに。
頬を伝う冷たい雫が、君と過ごした日々を溶かして流していく。
無意識に伸ばした手が君を求める。けれど君は、僕の手をすり抜けていく。
僕のこの手は儚くも短く、差し伸べるには遅すぎた。もう君に届くことはない。
色褪せたこの世界で、君の名を狂ったように繰り返す。
けれど、僕のこの声が君に届くことはない。
色褪せたこの世界で、君のいないこの世界で、心の死んだ骸が二人で過ごした部屋に一人、横たわる。













色褪せた世界



(君がいない)
(君という光を失ってしまった)