人は眠るとき、どのような感覚を抱くのだろうか。
何も感じることなく、目覚めたときに時間の経過を空の色で判断する人もいるのだろう。


ならば、それ以外の人は?
眠りに落ちる瞬間、どのような感覚に囚われるのだろうか。


虚無の闇に静かに沈んでいく感覚?
それとも、反対に溺れていく感覚?
闇ではなく、溢れんばかりの光に沈み行く人もいるのだろう。
闇でも光でもなく、ただ水に沈むこともあるのだろう。
沈むでも溺れるでもなく、ただ其処に漂う感覚を覚えることもあるのだろう。
沈むでも溺れるでも漂うでもなく、反対に昇っていく人はいるのだろうか。
まどろみの中、意識が途切れるそん瞬間、ふわふわと魂が浮くような感覚なのだろうか。
僕には、良く分からない。


あ、音が聞こえる。これは夢の中で鳴っている音じゃない。
何処で鳴っているのだろう。
今、僕は何処にいるのだろう。
夢の中?それとも(うつつ)の世?
そうか。ココは夢と現の狭間だ。僕は目覚めかけている。
眠りたいけれど、音がうるさいから起きてしまおう。音を止めたら、また意識を手放してしまおう。
僕は、閉じっぱなしで重くなっていた瞼を押し上げた。


狭間に漂っていた意識を引き上げたために、現で鳴り響いていた音が余計にうるさく聞こえる。
べしん、と叩き潰す勢いで音を消し、うるさく僕を呼んでいたそれを壁に投げつけて、もう二度と僕を呼べないようにする。
再びあのまどろみに意識を沈めようとすると、今度は僕の名を誰かがしつこく呼んでいる。
大きな声で僕の名を呼びながら、僕の体を揺り起こそうとしている。
つい、うるさいとその手を払いのけると、一瞬ぴたりと動きが止まった。
何事かと思いつつもそのまま眠ろうとした。
が、


「さっさと起きろっつってんでしょーが!!」


という叫びと共に掛布を引っぺがされ、挙句の果てにはベッドから蹴落とされた。


「ちょっと姉さん!何するのさ!」
「修がさっさと起きないからでしょ!」


嗚呼、あの疑問の答えを見つけるのは、しばらくお預けだな。













目覚めの時



(姉弟が大声で言い争う)
(そんな、日曜の朝)