いつまで僕はこの暗闇に留まり続けなければならないのだろう。 時を数えることさえ儘ならないこの闇は、僕の不安を加速させる。 僕が此処に至るまでの意味は有るのだろうか。 僕が「僕」と指している存在は本当に在るのだろうか。 今の今まで目を背けてきた疑問に、不安に、再び行き着いてしまう。 僕という存在は、世界に赦されているのだろうか。 僕という存在は、世界から排除されてしまったのではないのだろうか。 我ながら、くだらない事について思い悩んでいるとは感じている。けれど、今の僕にとってこれはくだらない事ではないのだ。 そもそも、この暗闇の世界は何処に存在する場所なのだろうか。 誰一人答えを知らないその疑問は、結局はいつも巡り巡ってふりだしに戻る。 けれど、今日(“今日”と言っていいのかは判らないけれど)は違った。 何処からともなく声が聞こえてきたのだ。 女にしては低く、男にしては少々高い声。中性的、というよりはどちらかというと、少年といった方がしっくりくる声色だった。 その声が何て言っているのかは聞き取れない。けれど、どこか悲痛そうに、懇願するように、誰かの名を呼んでいるように聞こえるのだ。 幾度も不明瞭に響いていたその声は少しずつ遠ざかっていき、やがて小さな余韻を残して聞こえなくなってしまった。 まるで、響いていた声など初めから存在しなかったのだ、と言わんばかりに暗闇の世界は沈黙を守り続ける。 ああ、あの少年は今どうしているのだろうか。 一人きりで何かを背負い続けているのだろうか。 けれど、僕は此処でこうして少年のことを案じる事しか出来ない。 歯痒い。己が不甲斐なく感じる。これ程に己が矮小な存在だと痛感するのは初めてだ。記憶が戻った訳ではないのだが、直感的にそう感じた。 存在するかも判らぬ出口を探して、あてもなく暗闇を駆けた。 (訳も解らず、唯本能的に) (あの少年が、待っている気がしたから) |