この闇の中で僕が目を覚ましてから、どれ程の時が流れただろう。
光の存在しないこの空間では、時間の感覚が曖昧になる。
数分が数秒に感じたり、数秒が数分に感じたりするのだ。時に関しては、己の感覚などまるであてにならない。
しかし、初めは恐ろしくもあったこの闇が、今では何故だか落ち着くのだ。
慣れ、だろうか。この闇に慣れてしまう程長い時を、此処で過ごしたのだろうか。
何にせよ、僕の神経は意外と図太く出来ているらしい。
…記憶はまだ、戻らない。
何故、僕は此処にいるのだろうか。
何故、僕は此処にいなければならないのだろうか。
解らない。判らない。分からない。わからない。ワカラナイ。
この事については、考えないようにはしているが、ふと気が付くと思考が向いてしまっている。
其処に行き着いてしまったなら最後、思考は完全に停止してしまうのだ。
考えるのを止めるという事は、全てを諦める事と同義だと僕は思っている。
だから、思考を止めてはならない。考える事を止めてはならない。
くだらない事でも、答えが出なくても構わない。
思考を止めてはならないのだ。
僕自身に関する疑問が溢れてくると、僕はどうしようもない不安に襲われる。
手掛かりも、僅かなきっかけさえない。何も無いまっさらな空白。何も思い付くことは無いし、くだらない言葉の一つさえ、脳裏に浮かぶことはない。
それでも僕は、思考を止めることは決してしない。













思考の世界



(何も無いからこそ、僕は思考を続ける)
(それは唯一、僕が僕であるという証明になるのだから)