一体どれほどの時が経ったのだろう。季節が廻った回数を最初は数えていたけれど、五十を超えたあたりから面倒になってやめてしまった。
弟は、白緋は元気にしているだろうか。観世音菩薩が施した術のせいで、白緋は此処に近付くことは出来ない。
力を持たない人間も此処に来ることは出来ないから、暇で仕方がない。時折、小動物が木の実を差し入れてくれる程度だ。
それにしても、暇だな。もうこのまま眠ってしまおうか。四肢に繋がれた鎖が妖力を封じ込めているせいで、妙に気だるい。


あれからまた十は季節が廻った。この頃、意識が少し定まらなくなってきているようだ。
人間から見たらとてつもなく長い時が過ぎたのだろう。膨大な妖力を抱え込むこの体は、そう簡単に朽ちることはない。
白緋の奴、俺を封じ込めたから、って観世に喧嘩ふっかけてはいないだろうか。あいつは頭は良いが、何分俺と比べれば気性が荒いほうだ。暇潰し、と称して観世とやりあっていたとしても、おかしくはない。いくら俺達が神に物凄く近いからって、神の眷属という訳ではないのだから、あまり無茶はしないでほしいな。
ああ、また眠くなってきた。最近は起きている時間の方が短い気がする。


今日は何だか面白いことが起きそうな気がする。俺の勘は結構当たるんだ。
珍しく意識もはっきりしている。こんなに気分が良いのは、果たしてどれくらいぶりなんだろう。封印されたあの日から今日で何年になるのか判らないから、検討もつかないな。
白緋は何をしているんだろう。観世に喧嘩をふっかけることはしてほしくはないが、だからといって人間にちょっかいだしてないといいけど。陰陽師はいろいろと面倒だしな。
とか言ってる(考えてる)傍から、どうやら陰陽師が来てしまったようだ。俺を滅しに来たのか?けれど、そう簡単に滅されてはやらないさ。



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