ずっと叫び続けてた。 声に出すことはしなかった。無駄だと判っていたから。 心の中で、ずっと叫び続けた。 聞こえはしないと解っていたけれど。 それでも、叫び続けた。 「たすけて」と叫び続けた。 呼べる名前なんて無かったから、「だれか」に「たすけて」と叫び続けた。 この聞こえるはずのない声が、いつかは誰かに届くのだろうか。 ――此処は、何処だ? 見慣れない天井。触り慣れない掛布の感触。感じ慣れない空気。そして初めて感じる気配。 目覚めたばかりの頭は、これだけの情報では結果は導き出せない。むしろ混乱するばかりだ。直感が脳の覚醒を拒んでいる。 「あ、目が覚めた?」 そんなときに視界に飛び込んできたのは、蜂蜜色の髪に栗色の瞳。少々幼く見えるが、彼の方が2つ3つほど年上だろう。 ぼう、っと俺の顔を覗き込んできた彼の顔を見つめていると、見知った気配が部屋に入ってきた。 「目ェ覚めたみたいだな?ナルト」 腰を屈めてやはり俺の顔を覗き込み、瞳の焦点がいまいち合っていないのに気付いてひらひらと手を振る。 紅い髪に紅い瞳。飄々とした雰囲気を醸し出す彼は、最近ひょっこり木ノ葉に現れた梶原冴弥だった。 異世界に飛ばされちった☆と連絡を寄越して以来、音信不通だった冴弥さんが急に戻ってきたと思えば、多分俺より年下の金髪少年を抱えてた。何でか知らんが気絶しちまった、とか言って俺んちに連れてこられても困るって…! 学校も休みで母さんもたまたまいなかったから、とりあえず俺の部屋のベッドに寝かせる。冴弥さんが、そのときに金髪少年から外したポーチとかの中身が気になったから訊いてみたら、出てきたのはクナイとか手裏剣とか巻物とか。こんな子供もこんなん持ってんのかよ!っていっても、ランボにイーピンにリボーンのことを思えば普通か、と思える自分が憎たらしい…。何かもうこういう状況にすっかり慣れてしまったみたいだ。これもみんなリボーンのせいだ…! それにしても、綺麗な金髪だなー。ディーノさんとは、また違う感じの色合いに見える。なんてじっと見ていると、ふ、っと金髪少年が目を覚ました。髪に負けず劣らずの綺麗な碧眼だった。 「あ、目が覚めた?」 とりあえず声をかける。けど、随分ぼーっとしてるみたいだ。相当疲れてんのかな? なんて思ってるときに、ひょこ、と冴弥さんが入ってきた。ひらひらと手を振りながら金髪少年に声をかけていた。どうやらナルト君というらしい。ラーメン? 冴弥さんがこの世界について軽く説明をして、ナルト君がそれに頷く。冴弥さんが何か耳元で言ってたけど、残念ながら聞こえなかった。 すると、冴弥さんが自己紹介でもすれば?と言った。俺達は改めて向き合う。 「えっと…俺は沢田綱吉、です」 「うずまきナルトだ」 「ちなみに、綱吉の方が2つ年上だからな」 ぽす、とベッドに腰掛けながら冴弥さんが言った。やっぱり俺より年下だったんだ。 ていうか、ナルト君も冴弥さんも何も喋らないから、沈黙がすごく痛い。何でこういう時にリボーンはいないんだよ…! |