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「はあー…桐…ほんと久しぶりだね。」
そう言いながらふらふら近づいてきた智樹に前から抱きつかれる。首筋のあたりでふんふん鼻がなっている、匂いを嗅ぐな。
「智樹、離れて。」
「やだ。」
背中をぽんぽんと叩きながら言うも全く離れる気配はない。暑苦しいし誰かに見られるのは良くないので背中をぐいぐい引っ張るもビクともしない。無駄に力は強いんだよなあ。
「誰かに見られたらめんどくさいから離れて。」
「大丈夫、この辺誰もいなかったから。」
「お前がこっちに来るのを見たやつが追いかけてくるかもしれないから。」
「大丈夫、ちゃんと撒いてきたよ。」
「……暑苦しい。」
本音をもらすと、渋々、といった顔で離れる。解放された…。
「こないだ食堂でも見てたのに全然気づいてなかったでしょ。」
「あー、なんか見られてるなとは思ってたけど、ちゃんと顔見えなかったから。」
「それだけじゃなくて本城といちゃいちゃしちゃってさ!」
「あれは智樹がこっちを凝視してくるから、親衛隊の人にバレないように燈夜がしてくれたんだよ。ねえ、めんどくさいからこの話終わり。」
「めんどくさいって…ひどい……。」
しょぼくれた顔をされるとなんとなく罪悪感がわかないこともないけど、めんどくさいものはめんどくさい。
智樹って若干変態くさいっていうかなんていうか、イケメンなのに勿体ない。
「あー…桐を捕まえたいところなんだけど俺逃げる側なんだよねえ…残念。」
「へー、それはそれはよかった。」
捕まったら面倒なのは目に見えてるし。
「…生徒会役員がこんなとこにいるのは良くないんじゃねえの。」
燈夜がぼそりと言う。
「お前だって、風紀委員だろ。1年の委員は見回りから外れてるからってこんなところで油売ってるのは良くないんじゃないの。」
「委員としての活動をしなくていいことになってるんだから関係ねえだろ。それに生徒会役員を捕まえた生徒のお願いを聞くとかなんとか意味わかんねえルールがあんだろ。」
「なにそれ初めて聞いた。」
お願いを聞くってなにそれ、知ってたら俺も……いや、変わらないか。捕まえるほうは必死だろうし生徒会の人たちは大変だなあ。
「ルール説明のとき副会長が言ってたでしょ!」
「ふーん…?そうなんだ。」
燈夜のほうをちらりと見てみると言ってたぞと言わんばかりの雰囲気。真面目にルール説明を聞いてたつもりだったけど聞けてなかったのか。
「もしかしてちゃんと聞いてなかった?もう…でもそういう抜けてるところもかわいい……。」
後半は聞こえなかったことにしておく。
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