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控えめに開けられた扉から入ってきたのは生徒会の人、名前は忘れたけど食堂で俺のことすごい睨んでた人。
たしか庶務様だかなんだかだっけな。後ろ手で扉を閉めながらも目線は外さない、なんだなんだと扉を見ていたものだから部屋に入ってきた瞬間から目が合ってしまっている。
「おい、どうにかしろ。」
初めてちゃんと顔見たなーなんか見覚えある気がするんだけどー気のせいかなー、とか考えてると燈夜に耳元で責められる。むしろ俺がどうにかしてほしい。
「無理だって、だいたいさ、俺話したこともないし…燈夜がどうにかしてよ。」
「桐…。」
「んえ。」
燈夜に訴えかけていると庶務様から声をかけられる、というか名前を呼ばれる。ちなみに名乗ったことはないし、名前を知られるほど有名でもない。
びっくりして変な声でた。
「もしかして誰かわかってない…?」
「うん。あ、庶務様?」
あ、タメ口で話しちゃった、でも同じ学年らしいし別にいっかー。と思っていると庶務様の顔がどんどんつらそうになっていく、悲しみに溢れるっていうの?
「俺!智樹!」
「ん?ともき…?」
「そう!実家がお隣さんの智樹!」
「お?おー…久しぶり、しばらく会ってないからわからなかった、そういえば中学から私立の学校行ってたもんね。」
「わからなかったって…小学生のときはあんなに遊んだし中学でも桐に会うために隙あれば家に帰ってたのに…ほんとひどい…でもすき……。」
なんか見覚えあるなー、というのは間違いではなかったらしく実家がお隣さんの幼馴染でした。去年は受験もあってほとんど顔見なかったからわからなかった、少し見ない間にイケメンになって身長も伸びてやがる。
「おい、なにがあんな真面目そうなイケメン知り合いにいないだ、幼馴染らしいじゃねえかよ。」
「いや、ほんと言われるまで気づいてなかったから許して。」
「名前も言ったぞ。」
「名字だけじゃん。」
燈夜にひそひそ責められる。それを見た智樹が不機嫌そうな顔をする。
「ねえ桐…隣にいるの風紀委員の本城だよね?2人が同室なのは知ってるけど…距離、近くない?」
「え、そう?別に普通だけど。」
確かに、耳元でひそひそ話せる距離だから近いといえば近いのかもしれないけど燈夜とはいつも平気でこんな距離感だし。
えっ、あっ…なんて言いながら顔を見合わせて赤面しつつ慌てて離れる、なんて仲ではないのだ。
「てかさ、なんでここわかったの。」
「ああ……桐は真面目に参加したりしなさそうだからサボれそうなとこを探して回ってたんだけど、桐の声が聞こえたから来てみればやっぱりって!」
「え、こわ、俺すごい小声で話してたけど。」
「桐の声なら小さくても聞こえるよ。」
「なあこいつこえーんだけど、」
「俺もこわい。こわいっていうかきもくない?」
「きめえ。」
いくら周りに人がいなくて静まってたとは言え、空き教室のドア前に立っても声が聞こえるかどうかくらいの小声だったし、足音がこっちに近づいて来てからは静かにしてた。声が聞こえてこっちに来るとかは普通無理、なのにこいつは平然と声が聞こえたから来ただとか、すごいとも言うけどちょっと気持ち悪い。
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