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「お前なあ、真っ直ぐ部屋に帰るつってたろ。なにしてんだよ、帰らないにしても俺に言えよ。」
帰宅したら途端燈夜のお説教がふってきた。今までなら面倒だなとか考えてた気がするけど、なんとなく、燈夜は本当に心配してくれたんだなって気がして、面倒だとか思わないしなんならちょっとだけうれしい。心配かけといてうれしいなんてだめだけど。
「聞いてんのか?」
「うん。」
「で、なんで澤村のとこにいたんだよ。」
「えーっとー…。」
新歓の下見という名のさぼり場所探検に出かけたこと、燈夜が委員会に行ってから思いついたから邪魔とか迷惑になったらやだなって思って勝手に行ったこと、途中で澤村先生に見つかって雑用させられたこと、を全部話す。
「はぁ…あのな、邪魔とか、迷惑とか、そんなんないから。むしろ黙ってどっか行かれたり、まっすぐ帰るって言ってたのに部屋にいなかったり、そういうのされるほうがきつい。」
「うん…ごめん。」
言わないほうが迷惑だったか、結局余計な心配かけさせたし…。なんか俺だめだったな、落ち込んできた……うれしいとか思っちゃだめじゃん、迷惑かけたのに。
「……心配すんだろ、心臓に悪い。」
「ごめん…。」
「…はぁ、そんな顔すんなよ。」
「どんな顔だよ。」
「良かれと思ったことが裏目にでて落ち込んだ子供の顔。」
「そんな顔してない。」
「してる。」
「してない。」
「…あのな、お前は俺を頼れ。」
「そうだけど…でも、」
「頼れって言われるのは迷惑か?」
「そんなわけないじゃん…。」
「俺も桐に頼られるのは迷惑じゃない。」
「本当に迷惑じゃないの…。」
「当たり前だろ、頼ることと迷惑かけることはイコールじゃないだろ。」
頼ることと迷惑かけることはイコールじゃない、か…。
もし燈夜が俺を頼ってくれたとして、頼ってくれたとは思っても、迷惑かけられたとか絶対思わないし。それがめんどくさいことでも、めんどくさい頼りごとだなとは思うけど、めんどくさいし迷惑だなとはならないし…燈夜もそう思ってくれてるのかな…。
「それに、俺は自分に頼れって言っときながらいざ頼られたら迷惑だとか言いやがる最低野郎なつもりはないけど。」
「…うん、そうだね。」
燈夜はヤンキーみたいなのに優しくて世話焼きだもんね。
「燈夜も、なんかあったら俺を頼ってくれる…?」
「あ?当たり前だろ。」
「ふは、燈夜俺以外に友達いないもんね。」
「…まあ、正直な。」
燈夜があんまり正直に答えるからちょっと笑っちゃったら、みっ、と燈夜にほっぺをつねられる。なんだよ、と思うけど落ち込んでた気持ちがふわっと軽くなる。
「そこは否定しなきゃ。」
「本当のことなんだからしょうがないだろ。」
まあ否定したって俺たち学校でも一緒にいるからばればれだけどね。
……燈夜も頼ってくれるなら俺も燈夜をちゃんと頼ろ、うん。
「燈夜、ありがとう。」
「ん。」
燈夜はちょっとだけほほえんで頭をぽんぽんたたく。
「よし、急いで飯にするから手伝え。」
「今日だけね!」
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