学校の図書室で本を読んでいたら、いつのまにか寝てしまっていた。起きた時にはもう空は暗くて、学校の門も締まりかけだった。もし、うたた寝なんかせずに帰っていたら課題の1つや2つ、終わっていただろうか?とはいっても悪いのは自分なので仕方ないなぁ。とマンションの鍵を鍵穴に差し込んだ。がちゃり。私はこの音があまり好きではない。両親は2人とも早朝に出かけていき、12時を回ってから帰ってくるのであまり会えない。この鍵の音を聞くと、家に1人しかいないことが突きつけられる気がするのだ。


「遅いじゃねーか。」

「来てたんだ。」


いや、最近は違うかもしれない。私の部屋の私のソファでくつろぐ、青い髪を見て私は思った。


「青峰は課題でも出せれた?」

「…まあな。」

「逃げちゃダメじゃん。」


別にいいだろ。とそっぽを向いて自分で持ってきたらしいエロ本を読み出す青峰に笑いがこぼれた。青峰は学年でも1、2位を争う馬鹿なのだ。そのため担任の先生にたびたび青峰専用の課題が出される…らしい。その課題が出される時期――つまり、定期テストから少したったぐらいの時期に青峰は必ず私の家に来る。まあ、別に幼馴染だから変なわけでもない。スペアキーを渡すぐらいだし。青峰の逃げ場は寮にはないから消去方で青峰は私の家にいると分かる。原澤先生にも「あまり彼を甘やかせないでください」と言われてしまった。今吉先輩も、諏佐先輩も、桜井も気づいているのだろう。


「その課題やらないとバスケの大会出られないんじゃないの?」

「なんで知ってんだよ。」

「桜井が泣きながら謝りに来たの。」


良かよ…。あいつ…。とボソボソ言っている。彼はいつものようにバスケ部に迷惑をかけているようだ。桜井が謝りに来た時は本当に怖かった。常に謝っているから桜井の謝罪には耐久が付いてると思ってた。でも泣きながらくるともう全く別物だ。声もかすれてるし、目からはぼろぼろ涙がこぼれ出ていた。傍から見るともう完全に私がいじめっ子だった。クラスの子の視線がそれはそれは痛かった。桜井は草食系男子っぽいのでなかなかモテる。だからなおさらだった。


「ほっとけ。」

「青峰、課題今持ってないの?」

「は?持ってるわけないだろ。」

「だよね。」


じゃ、取りに学校行こっか。そう行った私に青峰はめんどくさそうな、呆れたような、それでもって寂しそうな目を私に向けた。


「簡単な問題ぐらいなら教えれるからさ。いこ?」

「…行かねえ。」


青峰はそういうとベランダに出てしまった。青峰は課題から逃げるために私の家に来ている。私にまで課題なんて言われて、逃げ場がなくなったらいつもベランダへ逃げる。青峰の逃走パターンの1つだ。私も無理に、とは言わない。これが彼と私の一番心地いい距離だから。ベランダの青い髪を見ると孤独感がすう、と消えていくから不思議だ。バスケ部のみんなには青峰の分の課題も頑張ってもらおう。諏佐先輩とかは頭がいいから問題ないだろう。
そう思って私は夕ごはんの準備を始めた。

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