預言に縛られた人類を憎み、世界の仕組みを憎んだ人。預言に支配されない新たな世界を創造しようとした。
「人類を殺して、レプリカに入れ替えるだなんて……」
預言に詠まれた滅亡を阻止するという、ユリアの意思を継ごうとした人。世界を変えようと、誰よりも一生懸命だった。
「道徳的に……どうかしているわ」
そのような過激な改革に至った経緯は、彼の故郷の崩落が預言に詠まれていたから。また彼自身、酷い実験体にされていたらしい。

――君に、預言の無い世界をプレゼントしよう。

だなんて、柄にもない台詞を言った癖に。

「死んじゃったら……意味ないじゃない」
私は貴方のように今の人類を醜く感じているわけでも、預言に対して崇拝も憎悪もしていないけれど。

この世界は愛していた。
貴方は憎んでいたけれど、私は好き。だって、貴方に会えたから。

「ダアト、キムラスカ、マルクト。それに、貴方を倒した人達。皆のおかげで、預言の詠まれない世界ができたわよ」
貴方が今の世界を滅ぼそうとしたから、皆が真剣に考え始め、ただただ預言に従うだけの世界が変わった。
頭の良い貴方のことだから、もしかしてこのことも計算済みなのかしら。
「だからって、死ぬことないじゃない」
貴方の望んだ世界よりはぬるい改革だったかもしれないけど、折角預言が廃止になったのだから。

膝を折り、貴方の墓標に目線を合わせた。埃1つもないのは、貴方の妹君やその仲間達がよく訪れるからかしら。
「私は……ここに来るのに随分と時間がかかったわ。ごめんなさいね」


セレニアの花を捧げよう。
貴方の愛した花。光の無い地でも咲くことのできる花。


「……馬鹿なんだから」






(本当に愚かなのは、貴方をとめられなかった私かもしれない。)





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