見えている。優璃は思った。

 シンオウ地方、森の洋館。洒落た名前の付くその建物には、沢山のゴーストポケモンが住み着いている。一般人なら到底入らないような場所だが、そこに入ることが優璃にとって問題となることはまずない。この少女は、驚くことがほとんどないからだ。
 今では兄のように慕っている寡黙な青年と出会い、洋館に初めて訪れた際も、住人たちの熱烈な歓迎(ハタから見れば恐ろしいドッキリ的なイタズラだが)にも眉ひとつ動かさなかった。
 そんな彼女が今日もまた、洋館に遊びに来たのだが。

 冒頭に戻る。優璃は幼いながらに冴えた脳を必死で回転させていた。いつもなら扉を開けたら目の前にカゼノナさんがいるはずなのに、今日は違う、と。しかし、彼の居場所はすぐにわかった。
 大広間にある大きな銅像、その後ろに彼は隠れているのだ。彼の服の裾が先ほどからチラチラと覗いている。そして、彼の後ろに誰かがいるようで、ヒソヒソと話している。


「カゼノナサーン、ノリ悪いんですけどー」

「そうだ、こんぐらいしないとユーリはびっくりしな……痛!やめろ手つねんな!バレちまうだろ!」


 もうバレてます。優璃は心の中で答えた。

 三人に聞こえるように、わざと音を立ててゆっくりと歩く。こつん、こつん。すると話声がピタッとやんだ。そのまま銅像の方へゆっくり進んでいく。こつん、こつん。
 あともう二、三歩で銅像に手が届きそうな距離まで進んだ、そのとき。


「デーデンッ」

「デーデンッ」

「デーデッデーデッデーッデッ」

「キシャアアァアァアア!!!」


 深い紫色の髪をした、泣く子も黙るような化粧を施した青年、アカノメ。優璃と同じツインテールに、いつもの可愛らしいメイド服とは違い、おどろおどろしい色の服を着た少女、サージャ。先ほどのリズムを続けながら優璃に近付いてくる二人に、優璃は色んな意味で恐怖を覚えた。
 一歩後ずさりをした優璃の腕をサージャが掴み、いつもの声より2オクターブは下げたような声で優璃に囁く。


「どうだー……怖いでしょー……」

「やめとけサージャァアア……ビビッて声も出てねェ……」

「え、と、その……」


 悪魔大王アカノメ様が食っちまうぞー、そう言ってアカノメが優璃の頬に手を近付けたとき、アカノメの背後から伸びた手がそれを払いのけた。そこにいたのはもちろん、優璃の大好きなカゼノナその人で。自然と頬が緩む優璃とは逆に、どこか不機嫌そうな彼はヒョイッと優璃を抱き上げると、そのまま洋館の奥へと歩いていく。


「あ、あの、カゼノナさん……」

「あー!私もユーリと遊びたかったのにー!」


 抗議するサージャに小さくお辞儀をする優璃、そしてそんな彼女を抱き上げたままこちらに一瞥もくれずにスタスタと歩いていくカゼノナを見て、アカノメは苦笑する。



「自分が一番ユーリと仲良しです、ってか?兄貴かってーの」




 アカノメの独り言もよそに、優璃と共に静かに本を読むカゼノナの表情は、どことなく穏やかに見えた。




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洋館ズの皆さんの口調とか!!こんな感じで合ってますかね!?(^O^ ≡ ^O^)
過保護(?)なカゼノナさんが書きたかったのですが、全くカゼノナさんの優しさとか!天使加減が!!出ておらん!!orz また…リベンジさせてください…(´;ω;`)

というわけで、うーちゃんのみお持ち帰りOKでございます!無口コンビかぅぅわいいぃいいよぉおおぉおお↑↑↑≡≡└( 卍^O^)卍