★小話『楢山節考』

かぶき町では、30歳を過ぎた男は山に捨てる習わしだった。
先日、真選組の沖田が近藤を山に連れて行ったと言っていた。土方さんも間もなくでさ、と沖田は言って薄く笑い、そして新八と神楽に、旦那はまだなのかィ、と訊いた。
新八と神楽は、言われてみればそうだと思った。

その日、銀時はいつもの社長椅子で鼻をほじりながらジャンプを読んでいた。
新八と神楽はその前に立って、無言で銀時を眺めた。見納めだからしっかり目に焼き付けておこうと思ったのだ。
「なんだよお前ら」
銀時は鼻に指を突っ込みながら言った。
かわいそうに、銀時はなにも知らないのだ。しかし、かわいそうでも掟なのだから仕方がない。
「銀さん。なんか食べたいものはないですか」
新八が優しい声で言った。
「はあ?」
異様な優しさに違和感を覚えた銀時の頭を、神楽がまた異様に優しく撫でた。
「ちょ…、なに?」
びびる銀時に神楽はその頭を撫でながら言った。
「銀ちゃん、そろそろ行くアル」
「えっ。どこへ」
わけがわからない銀時は、いつのまにか、しかし有無を言わさない強引さで、神楽の背中におぶわれていた。
「えっ。なに?どこ行くの?」
神楽の背中であわてる銀時に、新八がポソッと言った。
「苦しくも哀しくもないとこです」



おわり

(2012/09/21 22:30)



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