★小話『シンクロ』

だめだ!全然息があってない!

何度やってもダメだった。
繰り返し繰り返し練習しても、ふたりの呼吸は合わない。
「そんなことで、JAPANの旗を背負えると思ってるのか!?」
コーチは少しの妥協も許さなかった。
「片方だけが上手くできるんじゃダメだ!揃っているから得点になるんだ!坂田、この競技の名前はなんだ、言ってみろ!」
「…シンクロです」
「そうだ。だが、お前のはシンクロじゃない!ちゃんと、おびに合わせろ!」
「コーチ、待って。坂田さんとワシはペアを組んだばかりで…」
「甘えるな!」
「ううっ…」
「あっ、どこに行くんじゃ坂田さん!」
「坂田!」

ロッカールームで泣き崩れる坂田。
「もうやめたい…」
「坂田さん、ワシらはまだペアを組んだばかりやないの…。練習するしかないよ」
「私なんか…。キャリアも才能もおびさんに及びもつかないもの。もともと選ばれたことが間違いだったんだわ」
「そんなことないよ!坂田さんはようやっとるよ!」
「ありがとうおびさん…。でも私…」
「坂田さん、大丈夫。コーチも坂田さんに才能があるから厳しく言うとるんよ。坂田さんはきっともっと伸びるよ」
「おびさん、本当に?私なんか…迷惑じゃない?」
「何を言うとんのよ、坂田さん!ワシ、坂田さんとペア組めて、ほんま良かった思てんのよ」
「おびさん…」

「よし、もう一回やってみろ坂田」
「ハイ!」
「いくで坂田さん!」

銀時はおびさんと呼吸を合わせ、新八の背中をぽんって叩いた。
二人のタイミング、高さは今度こそぴったりと合って、まさしくシンクロナイズしていた。しかも「完成度・難易度」も優れ、「構成・姿勢・芸術性」においても申し分なかった。

「できたじゃないか坂田!!」
「坂田さん、その調子や!」
「コーチ!おびさん!」

メダルも夢じゃない。

今まで頑張ってきて良かった、と銀時は思った。




(2012/08/09 15:01)







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