スマホにかえたよ!

銀さんがカチ壊れたので、新八はいつものショップに行き修理を依頼した。


しかし店員は修理を引き受けなかった。
「この機種は希にこういうエラーを起こすという報告がありまして、エラーが出ましたらICチップと電池を外し再起動すれば復旧します」
「いや、1日に3回も4回も再起動するのは面倒です。だいたい、作業中に突然フリーズされると非常に困るんで、直して下さい。僕はこういう時のために毎月300円も払って安心サポートプランに加入しているんです」
「これは機種自体のプログラムが抱えるエラーですので、修理はできかねるんです…」
てめー不良品つかませやがったのか、と新八はキレかけた。
キレかける新八に店員は言った。
「お客様。今、実はキャンペーン中でして、ご自宅でauひかりをご利用の方の利用料が1,480円引きになるんです。あと、なんやかやで合計毎月3,000円引きになって、現在の利用料とほぼ同額で機種変更できるのですが、この機会にいかがですか」
と図々しく営業をかけた。
新八はふざけるな、と思ったが、気が付いたら何故か機種変更の手続きを行っていた。


新八は銀さんには特別な愛着はなく、使えればそれでいいと思う方だった。なんでもよかった。だから、選ぶ基準なんか見た目くらいしかなかった。
店内にあった見栄えのする適当な銀さんを選び、持ち帰った新八は見た目だけで選んだ銀さんを取り出して言った。
「とりあえず、たかちんに返信しないといけないんでそっこーメール送って下さい」
見た目だけで選ばれた銀さんは無表情で答えた。
「アドレス しらない」
「しらねーわけねーだろ。アドレス帳に載ってるでしょうが」
「アドレス帳 ない」
銀さんは変なカタコトでそう言った。
なんだって!?
新八は驚き、取説を見ようとしたが、銀さんの箱にはなんも入ってない。


新しい銀さん(スマート銀時・スマ銀)はこれまでの銀さんとは全くちがう性質のものだった。
電話とネット以外にもいろんなことができるようだった。なんでもできるようだった。しかし、なんでもできるという事は、なんにもできないのと一緒だった。
たかがたかちんに返信するごときの事で、山ほどの手順を要求するのだった。
新八はぶっちゃけ床に叩き付けたいと思ったが、実質54,000円もした銀さんをそうすることは躊躇われた。
取説がないとどうにもならない。
「あんたの取説はないんですか」
「取り扱い説明書アプリ ある」
「なにがアプリだ。アプリケーションってちゃんと言え」
どれだ。
新八は54,000円もした見た目だけの銀さんをスクロールした。

「もっと上…もっと下」
「なんでこんなにツルツルしてるんですか」
「Facebookへようこそ」

ちがうってんだよ。



(2012-07-14 00:21)








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