★小話『I Have a Dream』

新八は、お気に入りのオッサン二人を是非会わせてみたいと思っていた。
会わせたらどんな会話をするのか、と思っていた。



「あ、どうも」
「いや、どうも」
「最近暑いですねえ。梅雨明けもまだなのに、こんな暑かったら先が思いやられます」
「そうですね。今年も暑くなるんですかね。そんななのに節電、節電では嫌になります」
「全くですね。市役所みたいな官公庁は以前からですが、去年なんかTSUTAYAまでが節電で暑かったですから」
「えっ、TSUTAYAまでですか」
「そうなんですよ。ゆっくりビデオ探す気にもなれなくて、かないませんでしたわ」
「ああ、ほんとですねえ。自分は去年地球にいなかったもので知らないんですが、TSUTAYAまでとはねえ」
「売上に差し支えると思うんですがねえ。今年の夏は地球にいらっしゃるんですか」
「どうでしょうねえ。出来ればおりたいんですが、こう暑くては考えてしまいます」
「そういえば、今までいろんな星に行かれたんでしょう。どっか涼しい星ご存知ないですか」
「まあ知ってはいますが、夏涼しいということは冬がキツいということですからねえ」
「ああ〜確かに〜」

………

なんだこれは、と新八は思った。
違うだろう。
なんか、もっとこう…。

新八がそう思った、その時

「あ、そうだ。おびさんに言おうと思ってた事が」

と、銀時が言った。

そう。そうだ。
言え。
なんかもっとこう、言うんだ銀時。




「消費税、10%になるのご存知ですか」




「お前らぁぁぁぁ!!!」

ばーん、と襖を開けて新八は叫んだ。

「ど、どうしたんじゃ新坊」
「なんなんだお前らは!なんなんだそれは!!」
「えっ…、なんなんだって何が。普通にお話してたんだけど」
「違うだろうがぁ!!なんかもっと、あるだろうが話すべき事がよぉ!!」
「そんな事言ったってお前、会ったばっかの人と話す事なんかこんなもんじゃん…」
「口答えするなぁ!!」

新八は銀時をいつもやってるようにバチコーンとひっぱたいた。

「さっ坂田さんんん!」

「なんでだよお前らは!なんでだ!
もっとこう…もっと、…もっと僕を、ドキドキさせろよ!!!!!!!!」

「…な、何を言うとんねん新坊」
「やかましいわ!!!!!!!!!」

新八は、いつも銀時をひっぱたいている癖が出て、おびさんもひっぱたいた。
そしてその場でいきなり着ていた物を全て脱いで怒鳴った。

「お前ら二人とも風呂場来い!」
「な…なんで…」
「いいから来い!背中を流してやる!!!!」

新八は、オッサン二人を引きずって風呂場に行き、二人まとめて湯船につけ、そして引きずり出すと有無をいわさず並ばせて背中を流した。



おわり

(2012-07-03 01:23)







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