★小話『銀さんとおびさんの妖怪退治』

銀時は本人も忘れているが一応侍的なあれだったので、村人から妖怪退治を頼まれた。
おばけは怖いからイヤだったが、今日は、おびさんという、おばけが全然怖くない人と一緒だったので大丈夫だった。

「おびさん、頼みますよ。マジで自分おばけとか無理なんで」
「坂田さんは怖がりじゃのう!おばけなんか嘘たい、寝ぼけた人が見間違えただけたい!ワシにまかせとき!」
おびさんはいまいちキャラが掴みにくかったが、頼もしかったので銀時は大丈夫だと思った。

妖怪の住み着く廃墟にたどり着いたので、銀時はインタホンを押した。
「すいません。侍の者ですが。退治しに来ました」
ビクビクしながら銀時が言うと
「なんですか。朝っぱらから」
ちょっと待って下さい今行きます、と返答があった後、チッと舌打ちが聞こえたが、しかしほどなく妖怪は玄関に現れた。
妖怪は見た目、地味でイケてない成績はクラスで中の下みたいなガキんちょだった。
なんだよ、こんなんなら『あんさー、悪ぃんだけどちょっと金貸してくんない』とか言えば、『すすすすいません、持ってません』みたいな感じですぐに退治できると銀時は踏んで途端に気が大きくなったが、そんな銀時をおびさんがたしなめた。
「坂田さん、油断ばしちゃいけん。油断すると頭からガブリといかれるばい」
ガブリはイヤだ、と思った銀時は気を引き締めて妖怪に対峙した。
妖怪は、二人を上から下までじっくりと眺め回すと
「…まあ、こんなとこじゃなんですから」
と言って、廃墟の中に二人を迎え入れた。

リビングみたいなところに通され、ふかふかの座布団に座らされ、お茶を出され、お茶受けにユーハイムのバームクーヘンを出された。バームクーヘンを食べ終わったら、そろそろ昼だからとか言って冷やし中華を出され、お腹いっぱいになったところで、ここに来るまで汗かいたんじゃないですか良かったら風呂はいりませんか、と言われ、キレイに掃除されたお風呂で温めのお湯に浸かって、出てみたら新品のパジャマが用意されていて、それ着てリビングに戻ったらテーブルの上に冷たい麦茶が用意されていた。

完璧なおもてなしだった。
銀時なんかはもう当初の目的を忘れて、バームクーヘンもっと食べたいとか言い出していたし、さすがのおびさんも、だいぶα波が出ているらしく普段よりかなり静かになっていた。
妖怪は、そのような二人をまた上から下までじっくりと眺め回していた。

「だいぶ長居してしもうたき、そろそろお暇しまムニダ」
おびさんが言った。おびさんも当初の目的を完全に忘れていて、頼もしいようで全然頼もしくなかった。そして、最初から全然頼もしくない銀時は畳の上に寝っ転がってバームクーヘンを食いながら『えー、もう帰るの?』とか言った。

立ち上がったおびさんは襖に手をかけ開けようとしたが、しかし襖は開かなかった。両手で力を込めても開かなかった。
アレ?アレ?とか言っているおびさんを見ていた妖怪は、目元に邪悪な影を浮かべ
「ふっ…」
と笑い、やがて
「ふふふ…、ふはははは!」
と天井を仰いで高笑いをした。
何事かと妖怪を見る二人。
妖怪は高笑いをしながら、お布団を敷き始めた。そして言った。
「お前たちは、もう二度とここから出られないのだ」
「なんだと」
「お前たちはここで、僕に優しくされながら、えいえんに幸せに暮らすのだ」

妖怪は敷いたお布団をめくり、まず、畳に寝っ転がっていた銀時をその中に入れた。悲鳴を上げる銀時は操られるようにお布団にくるまれ、そして添い寝した妖怪にうつぶせ寝の背中をポンポンされた。
妖怪の魔力によって銀時はやがてすやすやと眠ってしまい、そしておびさんも抗いがたく銀時の隣に横たわった。

「…優しくしてやる」
意識がなくなる直前、おびさんは妖怪がそう囁くのを聞いたような気がした。



妖怪は、胸のでかい清楚なお姉さんタイプか、または30歳前後の兄貴肌の人間が好みだった。
妖怪のお眼鏡にかなってしまった哀れな銀時とおびさんは、妖怪が言ったとおり、それからえいえんに妖怪に優しくされて暮らした。



おわり

(2012-06-29 02:12)







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