★小話『ねん くみ なまえ』

高杉『銀時、これを覚えているか』





高杉『ある日、先生が俺に言った。
「しんすけ。これはあなたが書いたのですか」
俺は何のことかわからなかった。
先生は俺に俺のかんじれんしゅうちょうを返し、その名前欄を示した。
名前欄は俺の名前が修正液で消され
(なんや)ねん(どこの)くみ(や)なまえ(ゆうてみい)
と書かれていた。
俺は愕然とした。こんなものを書いた覚えはない。当然だ。俺はそういうキャラじゃない。
先生は
「しんすけ。意外です」
と言った。
「あなたにこんなセンスがあるとは思いませんでした。ぶっちゃけ昨日、ひとりで爆笑して○付けができませんでした」
そう言う先生は、努めて俺のかんじれんしゅうちょうを見ないようにしながら言った。そして堪えきれないように吹き出した。
俺は唇を噛んだ。
違うのに。俺じゃないのに。俺はそういうキャラじゃないのに。

ショックで給食も喉を通らなかった俺は、次の時間は算数だったので、早々に予習をしようとさんすうノートを取り出し、そして異変に気付いた。
さんすうノートの名前欄も、なんやねんどこのくみやなまえゆうてみいになっている。俺は驚愕し、急いで机の中をあらためた。
机の中に入れていた俺のノート。れんらくちょうやじゆうちょう、こくごノート、しゃかいノート、おんがくノート、えいごノート、あらゆるノートが、なんやねんどこのくみやなまえゆうてみいになっていた。
なんという事だ。

俺は、クラス中からまきあげたビックリマンシールを床に広げて悦に入っているテメエに問いただした。
「これは貴様の仕業か」
こんな頭の悪い筆跡はテメエ以外にありえなかった。
テメエは
「そうだ」
と悪びれもせず言った。
「なんでこんな事をする」
激昂で震える俺に、鼻をほじりながらテメエは
「おもしろいと思ったから」
と答えた。

俺は先生に訴えた。
先生は
「おもしろいからいいじゃないですか。だって、こんな、どこのくみやなまえゆうてみい、とか…ぷっ」
とか言ったが、俺は重ねて訴え、やっとの事で学級会を開いてもらった。

俺は皆の前で言った。
「銀時君が、僕のノートに、なんやねんどこのくみやなまえゆうてみい、と書きました。僕はいやだったから謝れと言ったら、銀時君は謝りませんでした」
「ぎんとき。あなたはどう思いますか」
ずっと半笑いの先生が言った。
テメエは言った。
「ぼくは、おもしろいからいいと思ったからやりました」
すかさず俺は反論した。
「人が嫌がる事をするのは、いじめだと思います」
「いじめはいけませんねえ」
先生は言った。
「ぎんとき。いじめはいけませんよ」
先生がテメエに言った。
見ろ。正義は最後には認められるのだ。
テメエは
「いじめじゃないです。たかすぎくんは仲良しだから、ぼくはちょっとふざけただけです」
と言った。

その時、俺は初めて知った。
俺とテメエが仲良しだったという事を。
さっき「これは貴様の仕業か」と俺が言ったのがテメエと交わした初めての会話だったというのに。



銀時。
俺たちはそれ以来の長い付き合いだ。
だが、今しゃべっていて気が付いた。

俺とテメエは本当に友達なのか。』



おわり

(2012-06-26 14:22)







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