ていう、

俺はまた、銀さんにフェラされているのだった。


やっぱ銀さんは、フェラがすげえ上手い。
天パのつむじを見つめながら、しみじみ俺は思うのだった。
でもなんでフェラする銀さんは、こんなニュートラルでいれるのか。
いや、そもそもニュートラルでいれるのは何故ですかとかそれ以前に、ニュートラルな状態でフェラとか出来るのって何かおかしくない。
あんた、いま口に入ってんの歯ブラシとかじゃないんだよ、いくらその道ではマイルドだとはいえ、どっちかっていうと世間的にはあんまりマイルドじゃない存在のもんだよそれ。
どんな激しい歯ブラシでも、それよりはまだマイルドだよ。
そういうものをさー、その意外と奥行きのある口の中にすっぽり納めて、その長いベロをまんべんなく使って、そんな、そんなにさー、激しくさー…。


ヤバい、何かいきそうになってきた。


とにかく、フェラする銀さんの外側は部屋でマンガ読んでるのとほとんど同じ様子なのだったが、フェラする銀さんの内側はなんか凄いのだった。
俺は上下したり左右したりする天パのつむじを見つめながら思うのだった。


「銀さんさー、なんか…申し訳ないんだけど俺」

「何がだよ長谷川さん」

「いや…、だってこれ。なんかねぇ…コレ」

「何だよ水クセェなぁ長谷川さん。なに、遠慮してんの?」

「いや遠慮っていうか」

「かたい事いいっこなしだろ。ほらァ、この前アンタ1,000円貸してくれたじゃん。あれだ、ギブアンドテイクだろ」


えええええええええ。
せ。1,000円。
その言葉に俺は少なからずショックを受けたのだった。
これって支払いだったの。というショックと、その微妙な価格設定は何。というショックだ。


「そ、それはさすがに何かダメなんじゃない?」

「…あん?」


と言って銀さんは顔を上げた。
何かでベタベタの口を片側だけ歪めて


「ガタガタぬかしてんじゃねーぞコノヤロー。あーメンドくせーなもう、なんか」


と呟くと、いきなり立ち上がり服を脱ぎ出したのであった。

え。
ええええええええ。


「ええええええええ」

「いやいや…、まあ、そういうこともあるよね」

「ない!ないよ!ていうか何?どういう脈絡なのそれは」

「脈絡っていうか…。まあ、いいから挿入しとけよ。な」

「できないっしょ。な。とか言われて、できないっしょ普通!…何なのアンタは!俺の体を狙ってたっつうわけ?」

「体って。…気持ちわりーこと言うなよ。さすがにひく」

「挿入しとけの方がひくだろ!だいたい何、なんでフェラとか。この前から。おかしーだろおかしーだろ。何かあんだろ」


俺はかつてなく喚いたのだった。
だってわけわかんないのだ。わけわかんないことをわけわかんないままにしとくと、ものすごいわけわかんないことになるのだ。
それを俺は自分の人生を実験場に、繰り返し立証してきたのだ。
そして今、よく考えてみれば俺にとってのわけわかんないが受肉して現世に降臨したような存在である銀さんが、改めてわけわかんないを迫ってきている。
そりゃ拒む。


「ほら、もういいから服着てよ。落ち着いて」

「うっせえな!メンドクセェ、もうメンドクセェよ!…もういい、わかった。もう長谷川さんとは遊ばねぇ」

「え」


銀さんは突然怒鳴るだけ怒鳴ると、また唐突に俯いて、そして静かになった。
俯いたまま俺の手から服をひったくり、大人しく服を着はじめた。靴を履く屈んだ背中がこれまでになく頼りなかった。
なにこの雰囲気。
ていうか…。
銀さんは俺よりだいぶ年下だ。そりゃ30も近いおっさんであることは間違いないが、それでも俺に比べれば約10年分後ろを歩いてるのだ。
10年前の俺の事を思えば、未だ全然守るべき子供なのではないだろうか。
もしかして俺はまた何か失敗したのだろうか。あんたを傷付けたのだろうか。


「銀さん、待てよ」


何か、掴んだ肩まで細いような気がする。


「離せよ。もう、あんたとは遊ばないって言ったろ」

「待ってよ。ちゃんとわかるように話せ。俺、聞くから。友達だろ、後悔したくねえんだ」

「……」


掴んだ肩を振りほどくように、それでも銀さんはこちらに向き直った。
顔は俯いたままだったが、前髪の隙間から目がこっちを見ているのがわかった。


「銀さん、アンタ、もしかして本気で」


こういうのは、きちんと目を見て話すべきだ。そう思った俺は少し屈んで銀さんの表情を伺おうとしたのだった。
その時。





べすっ。





という非常に重たい音が耳元でした。


「え?」


俺は、いきなり、凄まじい張り手で頬を張られていたのだった。
あまりの勢いに軽くふっ飛んだ俺は、畳の上に横座りで尻をついていた。


「え?」


俺の前に立ちはだかる銀さん。
呆然と見上げたその顔は、前にも何度か見たことのある、明らかに自分より弱い人をどうぞやっつけてもいいですよという大義名分を得たときの、果てしなくイキイキとしながらも溢れ出る底意地悪さに歪んだ、あの笑顔っぽいけど笑顔じゃない、笑顔に似た表情だった。
畳に落ちた俺の鼻血を土足で踏んで、しゃがんだ銀さんが冷酷に細めた目で俺を覗き込んだ。





「…ていう、遊びでした」





銀さん。
なんていう回りくどさ。
でも回りくどくてもいいです。
その底意地の悪さに翻弄されるのが、もう嬉しいんだよね。痺れるんだよね。
こういう痺れって、他ではないもの。
マジで萌えだよ銀さん。


俺は、流れる鼻血もそのままに、これはやっぱり、もう一生、銀さんについていくしかないんだろうな、と思っていた。









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