あかずきんちゃん
僕は、病気のおばあさんにお見舞いを持って行っただけだ。
もう死ぬだけのおばあさんに、死ぬしかやることが残っていないおばあさんに、意味などないお見舞いを持って、暗い森を延々行ったのだ。
そして暗い森の先、おばあさんのふりをして布団の中に潜り込んでいたのが、銀さんだった。
僕は馬鹿者だったから、僕のおばあさんのふりをしている銀さんが僕のおばあさんではないことを完全にわかっていて、わかっていてそれで、こう思った。
これを、僕の新しいおばあさんにしよう。
だから、僕が銀さんに頭からバリバリ食われたのは単に僕が馬鹿者だったからで、つまり、僕は自分以外の誰をも責めることは出来ない。
銀さん、僕は頭の足りない赤ずきんちゃんです。
でも、頭の足りない赤ずきんちゃんは、帯刀していたんです。
だから、狼の腹の中から狼を斬り裂いて、血まみれになって外に出る。
僕は、そーゆー赤ずきんちゃんです。
*
「…そんで、どうすんの。外に出て、どうするの赤ずきんちゃん。狼の腹に石でも詰めて、井戸に捨てんのか」
「石は詰めないし、井戸にも捨てない。どうするかというと、もう一回、狼の中に入る。そんで、中から縫い閉じる。もう外に出ません。二度と。」
銀さんは、物凄く複雑な表情になって何かを言いかけたが、結局、何も言わなかった。
なんすか。
なんでそんな感じになるんですか。
僕、あんたのことを責めてるつもりなんですけど。
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