棒アイス
「僕に足でも舐めろってか。」
銀さんと、棒アイス食いながらそういう話をした。
「舐めろって言うなら舐めますけど。」
ていうか別に、言われれば何をでもいくらでも舐めるけど。
そんであんたの、舐めさせてやったぜ的な間抜け面を嘲笑してやりたい。
僕は、棒アイスを食っている銀さん、ていうか棒アイスが出入りしている銀さんの口を見ていた。
銀さんは、その二枚ある舌の内の一枚を使って、棒アイスを下から上まで、やたら丁寧に舐めた。
僕はもしかして、馬鹿にされてんのだろうか。
「それはお前、俺の足を舐めたいって言ってんの?」
銀さんはアイスをべろべろしながら、どこ見てんだかわからない目をしてそう言った。
「舐めたいっす。」
アイスをべろべろしながら答える僕の目も、きっと、どこ見てんだかわからない目になっているに違いなかった。
「ふーん…。」
「どーしますか、足舐めていいっすか僕っていうか、なんで僕があんたの足なんか舐めないといけねんだよ。ほんとムカつくなお前は。」
「何を怒ってんのよ。」
別に怒ってない。
しかし、敢えて言うならば、僕は本当は、アイスは舐める派ではなく、噛み砕く派だ。
噛み砕く派だけど噛み砕けないから、仕方なく舐めてるだけだ。
噛み砕けないのは何でかというと、知覚過敏だからだ。
<< prev next >>
text
top