2013/01/20 22:48
桂が目を覚ますと、枕元に銀時がいた。
「なんだ…なんの用だ…」
今日、桂は銀時とケンカした。
最近、志士の間で刀の柄のとこにファイヤーパターンとか鋲とかをいれてかっこよくするのが流行っていた。桂もさっそくかっこよくして、他のやつらに
「超ビッとしてるっす!さすが桂さん!」
とか言われていい気になってるのを妬んだ銀時が、
「ちょ貸せよ」
とか言って持ってって、そんでそのまま天人斬って、折った。
「柄だけでも返せ」
って言ったら
「捨てた」
って言った。
それでケンカになった。
枕元に座った銀時は言った。
「…これ、オメーにやんよ」
と、傍らを指差した。
見ると、高さ1メートルくらいのオレンジ色のゾウの人形が鎮座していた。鎮座ってゆうか『やあ!』みたいな感じで手を上げて立っていた。
「これはサトちゃんではないか」
薬屋さんの入り口によくいる、佐藤製薬のサトちゃんだ。
「前に、カワイイって、言ってたからよ…」
銀時は鼻の下を人差し指で擦りながら、居心地悪そうに言った。その頬は夜目にも赤くなっていた。
「銀時、貴様。覚えていてくれたのか」
「意外と重ぇんだな…サトちゃん」
銀時は、桂にサトちゃんをプレゼントする事で、刀の事を詫びようとしていた。不器用な銀時なりのゴメンねだった。
感動した桂は銀時を許した。
翌日、薬屋さんが怒鳴りこんできた。
「あんたらねぇ!なにしてくれんの!」
「俺たちは国のために戦っているのだ。少しの協力を惜しんでいては、この国に夜明けは来ないぞ」
「サトちゃんと攘夷に何の関係があんの!」
薬屋さんはすごく怒っていた。
「誰?!誰が持ってったの?!言っとくけどねぇ、サトちゃん、盗まれないように家族計画の自販機にチェーンで繋いであったんだよ!チェーン切れなかったんか知らないけど、自販機までぶっ壊して行きやがって!」
そんなことまでしたのか…。
怒り狂う薬屋さんの前で正座しながら、桂は若干ひいた。
確かに、改めて見るとサトちゃんにはチェーンがついている。
『ダメじゃ。薬屋さんはお怒りじゃ』
坂本がひそひそ声で言った。
『民衆の支持を得られねぇ革命は失敗する』
高杉がひそひそ声で言った。
『謝るしかねぇ』
言いながら、桂と銀時を見た。
「誰?!誰が盗ったの?!」
薬屋さんは怒っている。
桂は唇を噛んだ。
攘夷のため、国のためには無辜の民の怒りを鎮めなければいけない。しかしそのために、友の不器用なゴメンねを蔑ろにはしたくない。
…仕方あるまい。義のために己を捨てるのが武士道だ。
意を決した桂は顔を上げ、言った。
「薬屋さん…、サトちゃんを盗んだのは」
その時、桂の前に誰かの腕が伸びた。手のひらが胸に向けられ、桂の発言を押し止める呈だった。
「銀時…」
驚いた桂が銀時を見る。
しかし、銀時は桂を見ない。
見ずに、はっきりとした声で薬屋さんに言った。
「こいつです」
「サトちゃん盗んだの、こいつです」
桂を押し止めた銀時の手のひらは、桂の襟元を、犯罪者を確保するみたいな感じでつかみ上げていた。
※元ヤンのいとこから聞いた実話
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