ざあざあ、ざあざあ。朝から途切れることのない雨の音が今も窓を叩いている。どんよりとした暗い灰色の空。じとりと湿った空気。かろうじて板書はしているものの、内容なんて右から左へと耳の中を通り抜けていくばかりだった。
そっと教室を見回せば、お昼休みのあとの授業が眠いのはみんな同じらしく、かくんかくんと頭が揺れていたり、堂々と机に突っ伏している人さえいる。英語の担当の先生は、騒がしい人には容赦がないけれど、寝るのは勝手にしろ、というスタンスだったから、なおのこと。
わたしも寝ちゃおうかなあ。そう思いながら視線を落としたら、携帯のランプが点滅しているのが視界に入ったから、そのまま手を伸ばした。メール、の、送り主は、涼太くんだった。タイトルのないそれを開くと、本文にも文字はひとつもなくて、代わりに、画像が1枚だけ添付されている。淡い青の紫陽花。青い紫陽花が根付く土は、アルカリ性。小学生の頃に習った気がする知識の切れ端がふとよぎった。この紫陽花は、どこに咲いているんだろう。海常の近くなのかな。四角く切り取られた中で静かに佇む青をじっと見つめて、メールに保護をかけてから、返信のメールを打ち始めた。