「そろそろ休憩終わりなんだけど・・・。黒子くん、遅いわね。」
黒子と黄瀬が出て行ったドアと、時計を交互に見ながらイラついた様子のリコ。
「あーもう!!名前ちゃん、黒子くん呼んで来て!!」
「えぇ!?」
リコにそう言われ躊躇しながらもドアに足を運ぶ。
・・・涼ちゃんもいるだろし、行きたくないなぁ・・・。絶対気まずいよ・・・。
ガラッ
「・・・!・・・テツくん・・・。」
「名前さん!?」
ドアに手を伸ばそうとした瞬間、勢いよくドアが開き名前の前に黒子が現れ、心臓が大きく飛び跳ねた。
黒子は開けたすぐ先に名前がいるとは予想していなかったのか、驚いている様子だったがすぐに真剣な顔になり名前を見つめる。
「名前さんに、話したいことがあります。」
「・・・テツくん?」
テツくんの目は真剣で、私を見据えていた。これから何を言われるのかという不安よりも、その真剣な目に自分が映っていることに心臓が高鳴るのを感じた。
「僕は、名前さんのことが、どうしようもないくらい好きなんです。」
「・・・っ」
「僕は、影も薄いし、なんでもできるわけでもないし、そんなにかっこいいわけでもありません。黄瀬くんと比べたら勝ち目なんてないと思います。・・・でも、名前さんには、名前さんにだけは、選んでもらいたい。・・・本当に、好きなんです。・・・黄瀬くんにも、青峰くんにも、誰にも負けたくありません!!・・・僕の気持ち、受け取ってくれますか・・・?」
・・・黄瀬くん、名前さんに自分の気持ち全部伝えましたよ。・・・これで、文句ないですよね・・・?
不安そうに、しかし力強くもある。
いままで、こんなに真剣に自分に想いを伝えてくれる人、いなかったよ・・・。
胸が熱くなり、その熱はだんだんと上にあがり、目頭までをも熱くする。
「っ・・・。」
「名前さん!?」
テツくんはこんなにも私を想ってくれて、その気持ちを伝えてくれたのに、私はテツくんに何も伝えられてない。
自分の気持ちを言いたくて言おうとするのに涙が邪魔して言葉にできない。
「私、私も、テツくんのこと、好きだよ・・・!・・・私、誰かのことちゃんと好きになったこと、なくて・・・テツくんに嫌われてると思わせちゃうような態度とったり、困らせること、たくさんあって、それでも、ホントは、テツくんのこと、・・・大好きで・・・っ!」
名前が泣いていたことに驚いていた黒子だったが、名前の言葉を聞き、安心した表情を浮かべ名前の手を握った。
「名前さん、もう喋らなくていいです。名前さんの気持ち、ちゃんと伝わりました。・・・・名前さん、僕と、付き合ってくれますか・・・?」
「・・・っはい」
握られた手を見て頬を染め、黒子に微笑む。
そして、それと同時に後ろで見ていた部員たちが黒子を捕まえ、どついたり、頭をグリグリしたりし出した。
「キャプテン、痛いです。」
「まったく!!お前ら見てるこっちの身にもなれ!!ダァホ!!」
「ったく。やっとくっついたか。」
「やる時はやるじゃない!!」
「黒子、よかったな・・・!」
「よく言った!!流石だ黒子ー!!」
「・・・(こくこく)」
頭をグリグリされながら、痛いと言う黒子は言葉とは裏腹に嬉しそうに見えた。
その様子を見て名前も涙が止まり、笑顔が溢れた。
「やーっぱ、名前っちは笑ってた方がいいっスね!」
「涼ちゃん・・・!?」
「名前っち、おめでとうっス!!」
「あ・・・。」
黄瀬に笑顔で祝福され、素直に喜んでいいのか複雑な気持ちになった。
「だーかーらー、名前っちは笑ってた方がいいって言ってるじゃないっスかー!!」
「で、でも・・・!」
黄瀬の気持ちに応えられない罪悪感が蘇り、素直に笑うことができない。
「名前っちのこと、諦めたわけじゃないっスよ!!黒子っちに泣かされたらまたいつでも胸かすし、困ったことがあったらいつでも助けるっスよ!!」
「涼ちゃん・・・。」
「それはダメです。」
黄瀬に迫られる名前を目にしてすぐさま二人の間に入る黒子。
「黄瀬くんには感謝してますけど、名前さんは絶対に渡しません。・・・それに、名前さん泣かせることなんてないんで、黄瀬くんの出番はありません。」
「黒子っち幼馴染をなめちゃ駄目っスよ〜。名前っちと俺はただの友達じゃないんスよー!」
「ちょっと、涼ちゃん!!」
黄瀬はあえて黒子を挑発するようにして言う。
・・・名前っちのこと、そんなすぐに諦められるほどの想いじゃないんスよ!だから、最後の足掻きっス!!
「・・・黄瀬くん、ありがとうございます。」
「え!?なんスか急に!?」
「言いたかっただけです。」
「あ、そういえば言い忘れてたっスけど、名前っちとデートする時は俺も一緒っスよ!!」
「やっぱり死んでください。」
end