いつも名前っちに犬扱いされてるけど、今日こそは俺が名前っちを猫扱いして、俺が名前っちの飼い主になってみせるっスよ・・!
黄瀬はそう意気込んでこの日の為に集めたグッツを眺めた。
猫耳カチューシャ、猫じゃらし、毛糸の玉、ネズミの人形など。
「カチューシャは最終手段っスね。まずは毛糸の玉で遊ぶ名前っち・・!」
名前が毛糸の玉や猫じゃらしで遊ぶ様子を思い浮かべ、床をバンバン叩いて悶えていた。
「涼太?うるさいよー」
名前の声がドア越しに聞こえ、素早くグッツを隠すと毛糸の玉だけを持って部屋を出た。
「名前っちー、はいこれあげるっス!」
部屋から出て光の速さで名前の元まで向かう。
そして、テレビを見ていた名前の隣に座り、名前の手の上に毛糸の玉を置いた。
「・・?毛糸・・。私、編み物できないよ」
「いいっスよ、いいっスよ!そんなことより、転がしたりして遊んで欲しいっス!!」
言ってる意味がよく分からない様子の名前は、首を傾げて毛糸の玉を見た。
とりあえず膝の上に毛糸の玉を置き転がしてみる。
「・・・っ!」
あぁぁぁぁぁ!名前っち可愛いー!!
「そ、そそそそのままで、ちょちょっと待っててくださいっス!!」
「?」
名前が膝の上で毛糸の玉を転がすと、ピカピカと眩しい視線を黄瀬から感じ、黄瀬の方に視線を向ければ光の速さでどこかへ駆け込んだ。
黄瀬は一度部屋に戻り残りのグッツを全て手にすると、すぐさま名前のいる部屋に駆け込む。
「名前っち、名前っち!次はこれで遊んで欲しいっス!!」
腕に何かを抱えていたが、あまりにも素早過ぎて何を持っているのか見ることができなかった。
不思議に思いながらも、あまり気にせず黄瀬に渡されたものを見れば、それはネズミの人形だった。
「ネズミ・・。これでどうやって遊べって言うのよ・・。」
名前はそう言いながらもネズミの人形を両手で持ち、ギュッと締め付けては緩めたりして感触を楽しんでいた。
・・・!!名前っち、グッジョブ!!
「名前っち、これなーんだ!!」
「・・・猫じゃらし」
ニコニコしながら名前の目の前で猫じゃらしを振る黄瀬。
名前はなんとなくだが黄瀬の思惑に気づいた。
・・・コイツ、私を猫扱いする気だな。
日頃私に犬扱いされてるから自分もやってやる!的な感じなんだろうなぁ。
まぁ、少しくらいなら相手してあげようかな。
必死に揺れる猫じゃらしを軽くタッチすれば、黄瀬はパァーっと花が咲いたように明るい空気を醸し出し、プルプルと震える。
名前っちが、名前っちが・・・!
猫じゃらしにタッチしたー!!!
破壊力ハンパないっス!!
猫じゃらしを落とし、口に手を当て悶える。
今なら死んでも後悔しないかもしれないっス・・・!
名前は後ろを向きながらプルプル震える黄瀬を見て、薄く笑うとチラッと見えた猫カチューシャを手に取り、黄瀬にばれないようにこっそり自分の頭に着ける。
「涼太」
名前に名前を呼ばれ、口を押えたまま名前を見れば、猫耳のついた名前が首を傾げながらにゃーと呟き、ニコッと笑った。
「ぶっはっ!!!」
鼻血を出して倒れる黄瀬の頭を数回撫で、自分の頭からカチューシャを外し、黄瀬につける。
「まだまだだね、なんちゃって」
end