「・・・なんでここにいるの・・?」
誠凛高校の水道で緑間がカエルの置物片手に名前の前に現れた。
緑間の後ろにはリアカーがあり、高尾が自転車に乗ったままへばっているのが見えた。
・・・まさか秀徳からこれで来たんじゃないでしょうね・・?
「今日の名前のラッキーアイテムは眼鏡なのだよ。だから俺がわざわざ海常まで来た」
「分かった。なら眼鏡だけ置いて帰れ」
「それはだめだ。俺にはこの眼鏡が必要だからな。だが名前にも眼鏡が必要だ。だから今日1日俺が名前に付き添い見守ってやることで全て解決するだろう」
「・・・頭痛い」
急になんなんだコイツは・・!
いつもは来ないのになぜラッキーアイテムが眼鏡の時に限ってくるんだ。
いや、寧ろそれを狙った・・?
ってか私にはラッキーアイテムは必要ない・・!
黄瀬にバレるとうるさいから、バレる前に高尾を復活させて追い返そう。
名前は頭を抱えて唸っていたが、高尾の存在を思い出し、へばっている高尾の頭をぺちぺち叩いては様子を窺った。
「高尾くん、起きて」
「もう無理、疲れた無理」
いくら叩いても起きる様子がない。
緑間に余程コキ使われたのだろう。お気の毒に・・。
「名前っちー!!遅いんで心配で来ちゃったスよー!」
「あ」
緑間をどうやって追い返そうか次の作戦を考えようとした瞬間黄瀬の声が聞こえた。
・・あぁ、もうダメだ。絶対喚くよコイツ。
「黄瀬か」
「えっ!?な、なんで緑間っちがここに・・!?ってか名前っちと二人だったんスか!?」
「いや、そこに高尾くんいるからね」
「緑間っちには悪いっスけど、名前っちは俺のになったんスよ!!そういう訳なんで口説きに来たなら無理っスよ!!」
「ふん。俺がただ喚くだけのお前に負けるとでも言いたいのか。ありえないのだよ。」
「・・頭痛い」
自分の言葉を無視して会話を進める二人に名前は頭を抱えた。
「喚くだけってなんスか!俺はちゃんと名前っちのこと好きなんスよ!!」
「声でかい。静かにして」
「ふざけるのはその目に悪い髪だけにするのだよ」
「それは否定できないね」
「緑間っちだって・・!ふざけるのはそのラッキーアイテムだけにして欲しいっス!!」
「分かった、分かったから、もう戻ろう」
名前は会話を止めることはできないと判断し、二人にドリンクを持たせると、二人の腕を掴んで体育館に戻った。
その間も、名前を間に挟んだまま言い合いは続いていた。
ぶっちゃけ50歩100歩だと思う。
どっちもふざけてるでしょ。
「名前、遅かったな・・ってなんでお前が!?」
「あーなんか見学したいんだって。」
「はぁ!?」
あまり納得していない笠松に黄瀬を押しつけ、緑間を適当に座らせる。
「ここにいるのは構わないけど、そこで静かに見学しててね」
「どこに行くのだよ」
「私にも仕事があるの。一応マネージャーだから」
「そうか、なら俺も行こう」
「ねぇ、話聞いてた?」
「ラッキーアイテムは肌身離さず持っていないと効果がない。名前と俺が離れては意味がないだろう」
緑間のあまりの我儘に名前はプルプルと拳を震わせた。
・・・コイツ、一発殴っていいかな・・?
「名前っちは俺と一緒にいるんで、緑間っちは帰っていいっスよ!!」
「いつの間に来たの・・。」
必死に殴るのを我慢している名前の横にはいつの間にか黄瀬がいた。
「俺だって名前っちと一緒にいたいっス!!」
「いつもいるでしょ」
「でも部活だと名前っち俺の相手全然してくれないじゃないっスか・・!緑間っちだけズルいっスよ!!」
「それが俺とお前の差なのだよ」
緑間は名前の腰に手を回し部室へと向かう。
名前は顔を引きつらせて緑間の持つカエルの置物に手を置いた。
「とりあえずさ、二人とも黙ろうか」
ミシミシッ
ニッコリと笑う名前とは裏腹にカエルの頭が音を立てて崩れる。
二人は冷や汗を流しながらカエルの頭が粉々になる様子を見ていた。
((この人は、逆らっちゃいけない・・!!))
end