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「お前、そりゃあ好きってことなんじゃねーのか?」

「・・・は?」

それは、30分前にさかのぼる。

チャイムが鳴り、昼休みになった。
いつもなら適当な場所でご飯を食べていたが、今日は不本意ながらも火神の元に足を運んだ。

「火神くん。ちょっといいですか。」

「・・・うおぉわ!急に話しかけんな!・・・んで、なんだよ。お前から来るなんて珍しいな」

急に話しかけたつもりはなかったんですが・・・。まぁ、いつものことなんで慣れてますけど。

「ちょっと、相談したいことがあるんですよ。」

「相談?・・・ああ、影が薄いのは・・まぁそりゃしかたねぇ。それにあれだ!バスケじゃそのお陰でミスなんちゃらができんだ!いいじゃねぇか!」

何を勘違いしてるんだか。しかもそんなに慌てて励まされても嬉しくないですよ。

「いや、違うんですけど。あと、ミスディレクションです。」

「・・・お前影が薄い以外になにかあったか?」

「失礼ですね。僕だって悩みくらいありますよ。」


火神くんの前の席に座って弁当を開ける。
さっきからずっと立ったまま話していたため弁当も食べれていなかった。

「・・・で、相談なんですけど。・・・その、最近苗字さんに気づかれないのが少し悲しいというか。いや、前からそんなに気づかれてないんですけど。でも、挨拶しても返ってこないって結構傷つきますし・・・」

「いやいやいやちょっとまて!」

火神に途中で遮られちょっとムッとしたが、火神の慌ててる様子が滑稽だったので良しとします。

「なんですか?」

「お前が気づかれないのは苗字だけじゃねぇだろ?なんで苗字だけにそう思うんだよ」

いや、それがわからないから相談してるんじゃないですか。やっぱり火神くんに相談するなんて無謀だったのかもしれません。

「わからないです。だから相談に来たんじゃないですか」

「・・・そうか。じゃあ、これから言う俺の質問に答えろ。」

「・・・?」

卵焼きを半分にし食べようとしたところで、一度火神を見た。

「よし、まず・・・苗字を見てなんかいつもと変わるとことかないか?」

「いつもと変わるところ・・・そうですね、挨拶しようと思って近づくとなぜか異常に緊張します。結局気づかれずに終わるんですけど」

「そうか。じゃあ、挨拶できたらどう思う?」

「・・・すごく、嬉しいです。」

挨拶できた時を思い浮かべたのか、心なしか黒子の顔が赤く染まる。

「じゃあ、監督に挨拶できたらどう思う?」

「監督?・・・特になんとも」

「・・・じゃあ、これが最後だ。苗字が誰かお前以外の男と楽しそうに話してたらどう思う?」

・・・苗字さんが他の男と楽しそうに話す・・・。苗字さんはいつもだいたい女性の友達といますからね。でも、それが男だと、なんかムカムカしてきました。僕は、話しかけても気づいてすらもらえないのに!

「・・・なんかムカムカします」



やっぱりそうか。どうすっかな。黒子の奴、絶対自分では気付かなそうだし。多分、初めてなんだよな。よし、ここは俺が協力してやっか。


「・・・黒子。よーく聞け。お前はな、苗字が好きなんだよ」

「・・・は?」

ポカーン

活字で表すとしたらまさにそんな感じの顔をした。

「だから、お前は苗字に惚れてんだよ!だから苗字に気づいてもらえなくて落ち込んでたんだろ」

「・・・僕が・・・苗字さんを」

確かに、思い返してみればいつも僕の視線には苗字さんがいて、話してみたくて思いきって挨拶してみたけど、気づいてもらえなくて・・・。
いつもなら、それで別にいいかと諦めていたのに、苗字さんにはどうしても気づいて欲しくて何度も挑戦した。
それに、苗字さんが時々バスケを見に来たときも、緊張して練習どころじゃないこともあって監督に怒られたりもした。

そうか・・・僕は苗字さんが好きだったのか。

「・・・火神くん。僕は苗字さんが好きみたいです。・・・これからどうすればいいですか?」

「やっと気づいたか。俺に任せろ。特別にお前に協力してやる」
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