「誠凛高校と練習試合?」
「あぁ。そうだ。」
「私、聞いてないよ。」
「・・・誠凛のこと言うと黄瀬がうるせぇんだよ。」
「ふーん。そういうこと。私に黄瀬の世話させている間に他の部員には伝えたと。それで、私にはギリギリまで内緒にしてたってわけね」
「・・・」
ジトーっと笠松を睨めば、冷や汗を掻き名前と視線を合わせないようそっぽを向く。
でも、ちょーっとギリギリすぎるんじゃないかな。目の前に誠凛高校の人既にいるし。
しかも黄瀬うるさい。
「はぁ・・。とりあえず部室案内してくる。」
「・・おう。」
確か誠凛にはマネージャーいなかったよなぁ。案内したら即ドリンク作って、タオルも用意しないと・・。
名前はそんなことを考えながらわーわー騒いでる黄瀬の方に向かう。
「黒子っちとまた試合できるなんて嬉しいっス!!」
「ん!?」
徐々に近づくにつれて黄瀬の声が聞き取れるようになる。
そこには昔に聞いたことのあるような名前がちらほら出ていた。
「ちょっと黄瀬邪魔」
「名前っち!?え、ちょっ!」
黄瀬を退かせばそこには以前会った子犬の飼い主がいた。
確か、この子は!!
「黒子くん!!相変わらずかわいい!愛くるしい目!もう!!」
その子犬のように可愛い姿を見て思わずギューッと抱きしめる。
一応、彼氏である黄瀬の目の前で。
「えぇ!?」
「・・・名前さん、苦しいです。」
名前の後ろでは黄瀬が絶望的な顔をして固まり、黒子の後ろでは皆大口を開けて何が起こったのか理解できずにいた。
「名前っち、ど、ど、どどどいうことっスか!?・・・ってか黒子っち羨ましい・・!」
まだ名前っちに抱きしめられたことないのに・・・!!
彼氏なのになんスかこの敗北感は!?
「あーもう本当に可愛い!やっぱり小型犬のがいいわね」
「う、名前っち・・。」
後ろで喚く黄瀬を放置し、黒子を抱きしめたり頭を撫でたり思う存分堪能する。
水色の髪に顔を押し付けてグリグリすれば、黒子は顔を真っ赤にしてくすぐったそうにした。
「あ゛ー!!黒子っちずるいっスよ!!」
それを見かねた黄瀬は名前の体を抱き寄せ黒子から引き離す。
「ちょっと!」
「名前っちは俺のなんスから他の男にそんなことしちゃダメっスよ!!」
黄瀬に無理やり引き離された為、不満そうな顔をする。
だが、必死の形相で名前を抱き寄せ、離すもんかと奮闘する黄瀬に少し申し訳ない気持ちもあった。
「・・ごめんごめん、大型犬も好きだから」
「”も”じゃ嫌っス!!・・ってなんスか大型犬って!!」
名前を抱きしめ、肩に顔を埋める。
名前っちのバカ!!
俺結構傷ついたんスよ!?
いくら黒子っちでも名前っちは取られたくないっスよっ!!
「拗ねないで、ごめんね」
「・・・名前っちが、黒子っちにしたのよりももっとギューってしてグリグリしてくれたら、許してあげるっス。」
調子乗んな。
と言いそうだったが何とか耐えた。
・・・これから試合だし、さっきのは私が悪かったからね・・。
しょうがないな。
「じゃあ、試合に勝ったら、涼太の言う事聞いてあげる」
「!?・・ホントっスか!?後でなしとかダメっスよ!?」
「うん、ホント」
よっしゃー!と喜びながら名前を解放すると、会話に入れずただ突っ立ているだけだった黒子と誠凛の部員達の元へと向かい、キラキラした笑顔で出向かえる。
「黒子っち今度こそ絶対、ぜーったいに負けないっスよ!!」
「臨むところです」
黒子と黄瀬が向かい合い、かっこよく宣戦布告を交わす。
そして、黄瀬の後ろから笠松がやってくると、黄瀬の肩にポンっと手を置いた。
「動機が不純すぎんだよ、馬鹿が!!」
「いたーっ!!」
end