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「名前っち・・・!」


黄瀬はベッドで気持ち良く寝ていた名前を、焦った様子で激しく揺すり必死に起こそうとしていた。


「ん・・・。まだ、眠い。」

名前は焦る黄瀬とは裏腹に目を少しも開けようとせず、布団を被り丸くなる。


「名前っち!名前っち!!大変なんスよ!!」

「うるさい。」


布団を被り抵抗を見せた名前だったが、相当焦っているのかそれでも名前を起こそうと必死になっている。


「ん・・・。もー何?・・・は?」


黄瀬のあまりの必死さに名前はついに諦め、黄瀬を見た。
するとこそには涙目になりながら名前を見つめる黄瀬がいた。
それだけ言えばいつも通りなのだが、目線を少し上にあげればそこにはふわふわな犬耳が2つついている。


「・・・朝から盛るな。」

「ち、違うっスよ!!これ取れないんスよ!!」

「嘘。」

「ホントっスよ!触ってみれば分かるっス!!」


名前の手を取り自分の頭についているふわふわの犬耳に触らせる。名前は犬耳に触れるとそのまま思いっきり引っ張ってみた。


「いたっいたたた!!名前っちーひどいっスよ!!」

「どうやら本物みたいね。」

「さっきからそう言ってるじゃないっスか!!しかも冷静過ぎっスよ!」

「とりあえず、私が起きるまでに何があったか説明してくれる?」



それは、数時間前に遡る。


朝、黄瀬は名前より早く起きて、名前の寝顔を見ながら昨日を思い出して幸せに浸っていた。

付き合いだしてから数日経ち、昨日は黄瀬の家に泊まりに来た名前。そのまま色々あり、お互い服を脱いだまま眠りについた。

そんなことを思い出し、ニコニコと名前を見つめていたが、ふと頭に違和感を感じ触れてみると、身に覚えのないふわふわしたものが手にあたった。

不思議に思った黄瀬は名前をその場に残し1人洗面所に向かった。



「なんスかこれ!?・・・まさか、名前っちの趣味!?俺このままの恰好のままヤッてたってことっスか!?」

・・・いや、でも名前っちがやったなら、このままにしといてもう一回ってねだればもしかしたら・・・!

「よし!そうと決まればかっこよくきめるっスよ!!」

如何わしい考えを浮かべながら自分の頭についた犬耳を取ってかっこよくセッティングし直そうとした。


「いたっ。・・・あれ?」


だが、いくら引っ張っても犬耳はビクともせず、引っ張った部分からは痛みも感じる。
嫌な予感が頭をよぎり冷や汗が背筋をつたった。


「いや、まさか、そんなことあるわけないっスよね!」

そう思い少し強めに引っ張ってみる。それでも犬耳がとれることはなく、さっきよりも痛みを感じた。



「・・・名前っちー!!!」


大声をあげて洗面台から離れ名前が寝ている部屋へ飛び込んだ。そして、冒頭に戻る。



「という訳なんスよ・・・。」

「ちょっと待て。途中の如何わしい考えってなんだし。」

「あ、いや、それは・・・!・・・そういうことっスよ。」

「照れるな!!」


断じて私の趣味ではないと言いたいが、犬耳がついたまま上目遣いで肩を少しあげながら照れる黄瀬を見て、実はそういう趣味もいいかもしれないと思ってしまった。



・・・それに、よくよく見たら、なんか、こう・・・胸にくるって言うか・・!
か、かわいい・・・。


ムギュ


「名前っち!?」

「かわいい。」


自分の彼氏に犬耳が生えるという奇怪な現象が起こっているにもかかわらず、あまりの可愛さに思わず抱きしめてしまった。

そのまま手を頭に乗せ、犬耳を触ってみたり頭を撫でてみたりすると、気持ちがいいのか、それとも本能なのか、もっともっとと言うように頭を手に押し付けてくる。



「今日は仕事も学校もないし、その姿も気に入ったから、そのままでもいいんじゃない?」

「ホントっスか!?・・・よかったぁ、名前っちに振られるかもしれないと思って焦ってたんスよー!!」


そういう問題でもない気がするが、名前の言葉を聞いて心底安心した黄瀬は調子に乗って名前の腰に手を伸ばした。


「ん・・・?尻尾もついてる・・・!」


黄瀬が名前の腰に抱き着き、お腹に顔を埋めると今までは見えてなかった尻尾がものすごい勢いで左右に揺れているのが見えた。

「か、かわいい・・・!」

「ん・・・!?」

それを見て左右に揺れる尻尾を咄嗟に掴んでしまった。
掴まれた黄瀬はいきなりのことに驚いたような顔をして名前を見つめた。
その視線を気にすることなく尻尾を掴んだり離したり撫でたりして遊びだす名前。


「名前っち・・・!なんかそれ、変化気分になるんスけど・・・!」


顔を赤く染めながら名前を見つめ、期待のこもった目で見てくる。
名前はその顔を見てニコっと笑い黄瀬の頭を撫でた。

「1回、だけだよ?」

「・・・!」

妖しい微笑みを浮かべる名前っちに既にノックダウン・・・!
たまにはこういうハプニングもいいっスね・・・!

end
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