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「・・・手術、か・・。」


ボソッと小さな声で呟く。


結局昨日はそのことについて深く知ることはできなかった。
だが、今日はこれから試合がありこっちに集中しなくてはならない。


・・・それに、名前は今元気なわけだし、手術だって成功だったはずだ。

名前の辛い過去を掘り下げるなんてしないほうがいいだろう。


「高尾、スピードが下がっているのだよ。」

「わーったよ!!」


考えていたことを頭の隅に追いやり、今自分が漕いでいるリアカーの速度を上げる。
どうすれば緑間にリアカーを漕がせることできるか考えながら。



今日は海常高校で秀徳高校と練習試合が行われる。

以前に見に来て欲しいと高尾に言われていたが、その日は用事があるからと言って断っていた。


「内緒で行った方が楽しそうだしね〜!」

だが断ったのは名前がただ単に、内緒で行ってサプライズのようにしたいからなだけだった。

名前はスキップしながら海常高校に入って行った。



「やべ、迷った。」

スキップして海常高校に入ったはいいが、数十分たった今でもまだ体育館にたどり着くことができていなかった。


「はぁ・・。試合まではまだ時間あるけど・・誰か知ってる人いないかな?」


って言っても誰がどこの学校に行ったかなんて知らないし・・。
あーもう!なんでここはこんなに広いんだ・・!!


「あれ?・・・名前っち・・?」

「!?・・・その声は・・!」

名前が半分諦め状態で突っ立っていると後ろから懐かしい声が聞こえた。
名前はその声を聞いて勢いよく後ろを振り返ると、そこには眩しいくらいの黄色の髪をした懐かしい人物が立っていた。


「黄瀬勝田!!」

「違う違う!!黄瀬涼太っスよー!!名前っち相変わらず酷いっス・・。でも、名前っちぃぃぃぃっ!!久しぶりっスー!!」

「うぉわ!?」


落ち込んでいた状態からすぐに回復し、ガバッと効果音が付くぐらいの勢いで名前に抱き着いた。
ずっと会っていなかった時間を埋めるように名前の頭にスリスリと顔を押し付けてヘラヘラと笑う。


「近いよ!黄色が眩しい!!」

「えっ!?」


擦り寄ってくる頭を押さえつけて、黄瀬から離れようと必死にもがく。


「名前っちの罵声久しぶりに聞いたら・・なんか、ドキドキするっス!!」

「気持ち悪いなー。・・・それよりさ、体育館に案内してよ!」

「え、体育館っスか?・・は!まさか名前っち俺の試合見に来たんスね!?」


キラキラと目を輝かせながら嬉しいっ!というオーラを振りまく。


「黄瀬を見にきたわけじゃないけどね。いるって知らなかったし。」

「そういうことなら俺今日試合がんばっちゃうっスよー!あ、じゃあ名前には特等席用意するっスね〜!!」

「こいつ、聞いてねぇ」


名前の手を掴んでスキップをしそうな勢いで名前を体育館に案内する。



「はい、名前っちの席はここっスよ!」

「おかしい!!」


絶対におかしいよ!!だってここ監督の隣じゃん!?
私何者!?

・・・あ、でも高尾くんと真ちゃんの驚く顔が見れるかも・・。
いや、でも敵チームの陣地じゃ応援ができない・・!!


「遠慮しなくて大丈夫っスよ!!監督にはちゃーんと許可取ったんで!」

「監督何してんの!?」


若干会話が噛み合っていないにも関わらず、名前がいることが余程嬉しいのか始終ニコニコと話す黄瀬。


「ちーっす!」

「よろしくお願いしまーす!」

既にユニホーム姿になっている秀徳高校の部員達がぞろぞろと体育館に入ってきた。
黄瀬の後ろを覗けばそこに高尾と緑間も見える。
だが、二人は黄瀬のせいで見えないのか、まったく名前に気づいていない。

黄瀬はヘラヘラと笑っていた顔を正して、自分の試合相手を一度見て、名前に視線を戻した。

「名前っち、俺本気でこの試合勝つんで、もし、この試合に俺が勝ったら・・・」

「いいよ。罵声を思う存分与えてあげよう。」

「まじっスか!?・・・って違うっスよー!!」

冗談で言ったつもりだったのに、一瞬嬉しそうな顔をした黄瀬を私は見逃さなかった。

・・・やっぱりコイツそういう趣味があったのか・・。

「俺と、付き合って欲しいんスよ!!」

「は?」
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