俺が名前を気にかけるのは幼馴染であるからで、恋愛的な意味はないと思っている。
だが・・・
「俺、結構本気で名前のこと好きみたいだからさ」
そう言われたとき、なぜか胸が詰まったように苦しくなった。
「一体、なんなのだよっ・・!」
緑間はふと、まだ名前が帝光にいた頃同じような胸の苦しみがあったことを思い出した。
「そうえば・・」
◇
帝光中学3年
「名前っちー!」
「抱き着かないでよー。重いっ!」
名前はバスケ部に所属しているわけではなかったが、よく体育館に来ては緑間の応援をしていた。
その為バスケ部全員名前が緑間の幼馴染だと知っていた。
初めは「あの緑間が女と歩いてる!?」と騒がれていたが、幼馴染と知ってからは一目置かれることはあっても特に騒がれることもなくなった。
そして、緑間を通じて名前と話すことも多くなり、人手が足りない時にはマネージャー業を手伝ってもらったりしているうちに、名前の正確に魅かれる者も多く、部員たちはバスケ部の一員のように名前に接していた。
それは途中から入部した黄瀬にも同様に言えることだった。
「あっ、真ちゃん待ってよー!黄瀬邪魔。」
「酷っ!!」
緑間と共に歩いていると黄瀬に抱き着かれバランスを崩す名前。
なぜか黄瀬に異様に気に入られ会う度に抱き着かれていた。
緑間はいつものことながら、若干眉間にしわを寄せるとイライラした様子でさっさと歩いていく。
だが、その後ろを急いで付いてくる名前になぜか、安心していた。
「紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちーん!今日もお菓子持ってきたー?」
手にたくさんのお菓子を抱えながら名前に近づく紫原。
黄瀬同様に紫原も異様に名前に懐いていた。
名前の作ってきた差し入れのお菓子を食べた時においしいと大絶賛をしていたから、多分それが懐いた理由だろう。
「あるけどね、真ちゃんのだからだめー!」
「!?」
「えー、俺紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんの作ったお菓子食べたいのにー」
「だってむっくんにあげると真ちゃんの分も食べちゃうんだもん。だから余ったらあげるよ。」
「やったー!」
そう、そいえばこの時も、名前と紫原が話しているとイライラして、でも、自分が話題に出れば嬉しくなったり、安心したり、色んな感情が駆け巡った。
黄瀬の時も、紫原の時も、・・・そして、高尾の時も・・・。
◇
「この気持ちが、恋愛とでも言うのか・・・?」
もしそうなら俺はだいぶ前から名前を好きだったということになるな・・・。
はぁ、と溜息を吐き帝光時代を振り返っては考えを巡らせていた。