「あれ?真ちゃん・・・眼鏡は・・・?」
「?・・・あぁ、名前か。」
いつも通りおとなしく席に座っている緑間にちょっかいをかけようとした名前は、何か違和感を感じた。
いつも読んでる本も見当たらないし、ボーっと黒板を見ている。
そして、徐々に視線を上げていき、緑間と目が合った時眼鏡がないことに気づいた。
「今日朝練で壊しちゃったんだよねー。真ちゃんがわがままばっか言うからさ。」
高尾がひょっこり出てきて笑いながら言う。
「あーあ。真ちゃんのわがままについにキレちゃった感じかー。どんまい、真ちゃん!」
「なっ!わがままではないのだよ!!」
ガタッと音を立ててイスから立ち上がる。だが名前と高尾の正確な位置までは分からない為に視線が定まっていない。
「眼鏡なしの真ちゃんなんて普段めったに見ることないし・・・はい、写メゲットー!!」
「お!しかも目線変なとこ言ってるし!!面白っ!!ナイス、名前!」
「・・・おまえら・・・!!」
二人の笑い声を頼りに手を伸ばして携帯を奪おうとするも、かすりもしない。
目が見えないという事がこんなにも屈辱的なことだとは・・・!!
「そーいえば真ちゃん今日色々大変だね・・・。目が見えないんじゃなんもできないし・・・。よし、じゃあ特別に私と高尾くんが真ちゃんの目になってあげよう!!私右目―!」
「えっ俺も!?てかじゃあ俺真ちゃんの左目!?」
「・・・まぁ、それは、・・・っく、まさかこいらの世話になるとは・・・!」
こいつらの世話になるなど言語道断で屈辱的なことではある。だが、名前に世話をされるのは嫌ではない。
チラッと名前がいるであろう方を見るが、ぼやけて名前なのか誰なのか分からないことに少しのイラつきを感じた。
「次移動教室だよー。真ちゃん立ってー!!」
「あぁ。」
手元にあるものすら見えにくい目で、なんとか教科書を見つけ立ち上がる。
立ち上がったと同時に名前に右手を掴まれ、そのまま歩き出す。
「・・・なっ!!」
「真ちゃん目あんま見えないんだから、手繋がないと危ないでしょ!・・・高尾くんー!行こうー!!」
「おう!今行くー!・・・って、何手繋いでんの!?」
鞄に入っていた教科書を出して名前の元に向かおうとすれば、若干硬直気味の緑間といつも通りニコニコしている名前が手を繋いでいた。
・・・なんか、もやもやする・・・。
「高尾くんは、真ちゃんの左手ね!」
「え!?俺も繋ぐの!?」
「な!?男同士で手を繋ぐなど嫌なのだよ・・・!」
「そうそう!それに繋ぐなら名前と繋ぎたいし!!真ちゃんだけずりぃじゃん!!」
いくら真ちゃんの目がほとんど見えないからって名前と手を繋ぐなんて、やっぱずりぃよ!!
俺だって、名前と繋ぎたいし!
「うーん。なんか違う気がするけど・・・。ま、いっか!」
「お!?」
「!?」
高尾が名前と緑間の繋いでいる手を凝視していると、名前が高尾と緑間の脇に手を入れ腕を組んだ。
「これで狭い廊下でも3人で歩けるし、真ちゃんも誘導できるね!」
「・・・っ、いや、凄い嬉しいけどさ、名前、近くね!?」
「名前!調子に乗るな!」
「いーの、いーの!レッツゴー!!」
真ちゃんはブツブツ小言を言いながらも、嬉しそうな顔してるし、俺は俺で心臓がバクバクいってヤバいし、色んな意味で名前には敵わないと思った。
真ちゃんも敵わないとか、名前すげーな。