「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞー!!」
「ミドチーン、お菓子ー!」
「ラッキーアイテムがチョコだったのはこの為だったのか・・・。」
「「わーい!」」
渋々渡されたチョコを袋に詰めて喜ぶ二人。
ここまでならよく見る光景だが、二人の格好はいつもと異なり仮装をしていた。
10月31日ハロウィン
魔女の帽子をかぶった名前と、適当に包帯が巻いてあるだけの紫原は、一足先に部室で待機し皆が来るのを待っていた。
緑間が部室に入ると冒頭の言葉と共にお椀の形にした二人の手が自分に向けられたのだ。
今日のラッキーアイテムがチョコだった為二人のイタズラに合うことなく、お椀の形をした手の中に渋々チョコを入れて自分のロッカーに向かう。
「やったね、あっくん!チョコゲットー!!」
「ねー。もっといっぱいにならないかなー。」
次は誰がくるのかとワクワクして待っている二人を遠目から見て溜息を吐く。
きっと自分以外はお菓子を持ってはいないだろうと考え、自分以外の部員がこの二人のイタズラに合う光景が頭をよぎり、お菓子を持っていたことに心底安心した。
ガチャッ
「あ!テツくんだー!テツくんテツくん、お菓子ちょうだいっ!!」
「黒ちーん、お菓子ー!」
「そう言うと思ってたくさん持ってきました。どうぞ。」
そう言って二人の手に乗りきらないほどのお菓子を二人に渡す。
「わー!!流石テツくん!!大好き!!」
「えーそれはダメー!」
自分の手から落ちたお菓子を素早く拾い袋に詰めていく。
紫原は名前の発言が気に入らなかったのかムスっとして黒子を睨む。
「あれ名前っちなんスか、その格好?ってか紫っちは怪我でもしたんスか!?・・・巻くの下手っスね〜。」
「涼ちゃん!お菓子ちょ・・」
「ヒネリつぶす!!」
「ちょ、あっくん!イタズラはまだだよ!お菓子もらえなかった時だけ!!」
黒子の次に黄瀬が部室に入り、それに気づいた名前は黄瀬からもお菓子を貰おうとしたが、黄瀬の発言にブチ切れた紫原が名前の言葉を遮る。
だが、黄瀬にのばされた手は名前に途中で阻止され、黄瀬に届くことはなかった。
「はい!涼ちゃん、お菓子ちょーだい!」
「え?急にどうしたんスか?俺なんも持ってないっスよ〜。」
ニコニコと笑いながら言う黄瀬に、名前はキョトンとした顔をして途中で止めていた紫原の手を放した。
「あっくん、イタズラ開始ー!!」
「ヒネリつぶす!!」
「え?え?えぇぇぇぇ!?」
黒子と緑間は紫原にひねりつぶされる黄瀬を見ないようにして、部活の準備を始めた。
「学ばない人ですね。黄瀬くんは。」
「人事を尽くさないからそうなるのだよ。」
黄瀬の叫び声が聞こえなくなって少しすると、ドアが開く音がした。
「ちーっす。」
「まっくろ・・」
「おい、殺すぞ。」
「うっ・・・あっくん!!イタズラ開始!!」
「ヒネリつぶす!!」
「あ?ちょ、いてっ!おい!!」
ドアが開き青峰だとわかった名前はまっくろくろすけと言おうとした。
しかし、青峰に遮られしかも悪人顔で睨まれた為涙目になった名前は素早く紫原の後ろに隠れて青峰を指さしながら紫原に言い放った。
「・・・青峰くんも、学ばない人ですよね。」
「・・・人事を尽くさないからそうなるのだよ。」
そう言いながらも若干震えている二人。
今日ほどお菓子を持っていて良かったと思う日は多分ないだろう。
「俺もお菓子持ってないけど、まさか俺にもイタズラする気じゃないよな。」
騒がしかった部室が赤司の言葉によって静かになる。
名前と紫原の言葉を緊張しながら待つ。
・・・いや、まさか紫原に限ってないだろ・・・!!
「もー赤司くん、何言ってるのー!赤司くんからお菓子とるわけないし、イタズラするわけないじゃーん!!」
「赤ちんはー特別ー!」
・・・ですよね!!!
会話に入っていない部員全員の心の声が一致した瞬間だった。