「名前、ちょっときて。」
「はーい!!」
部活が始まったと同時に名前を呼び、紙とお金を渡す。
「?」
「今日はテーピングとボトル買ってきて。詳しいことはその紙に書いてあるから。」
「今日桃ちゃんいないのに、私買い出しでいいの?」
「ああ。」
「え?スコアとかはいいの?」
「黄瀬にやらせる。」
「タオルとかボトルは?」
「黄瀬にやらせる。」
「・・・ボール渡しは・・・?」
「黄瀬にやらせる。」
赤司の言葉が聞こえた黄瀬は、ボールを持ったまま素早い動きで振り向き顔を引きつらせる黄瀬。
黒子は黄瀬の肩を軽く手で叩き静かに首を振る。
・・・黄瀬くん、頑張ってください。
「赤ちん、俺も紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんと買い出し行きたいー。」
「ダメだ。」
「えっ。でも、紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん一人じゃきっと持てないよー。」
「テーピングと空のボトルだけだし大丈夫だろ。」
「うん。大丈夫!!」
「えっ!・・・でも、紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんいないの、俺やだー!赤ちんお願い!」
いつもお使いを頼まれるのは桃井で、紫原が名前を離さない為名前がお使いを頼まれることは滅多にない。
その為か名前はわくわくした様子で紙を凝視していた。
少しでも名前と離れるのが嫌な紫原は珍しく赤司に楯突いている。
とは言っても猫背でお願いのポーズをとっている為、赤司の機嫌を損ねることはないだろう。
「敦、俺の言うことが聞けないのか?」
「う・・・。分かった、待ってる。紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん、早く帰ってきてねー!」
「はーい!じゃあ行ってきまーす!」
寂しそうに名前を見つめる紫原とは対照的に名前はニコニコしながら体育館を出て行った。
名前が買い出しに行ってから何十分か経った。
誰が見ても分かるくらいにイライラしている紫原は、休憩中にも関わらずまいう棒を食べることなく、名前が出て行ったドアを凝視していた。
誰しもがなるべく紫原に近づかないよう、細心の注意を払って気を遣っている中、赤司だけは楽しそうに紫原を見ていた。
「次は1on1をやる。そうだな、まずは敦と黄瀬。」
「ヒネリつぶす。」
「え!?俺っスか!?」
コートに入る前からブチ切れ寸前の紫原に既に負け腰の黄瀬。
涙を流しながら項垂れていると、また肩を軽く叩かれた。
叩かれた方を見れば、黒子が可哀そうなものを見るかのような目をしながら静かに頭を振っていた。
「黒子っち・・・。」
・・・犠牲者はいつも俺なんスね・・・。名前っち、お願いだから早く帰ってきてー!!
「黄瀬ちん、早くコート入って。」
「は、はいっス・・・。」
トボトボとコートに入り一応構える。
多分、瞬殺っスけどね・・・。俺が。
ガラッ
「ただいま〜。」
「!?紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん!!」
「名前っち!!」
紫原にヒネリつぶされる覚悟をした黄瀬だったが、ゲームが始まる寸前で名前が買い出しから帰ってきた。
名前の姿を目にした紫原は、今までのイライラはどこへやら。ニコニコと満面の微笑みで名前を抱きしめ、名前の頭に顔をスリスリと押し付ける。
その様子を見て、昨日の質問の答えがやっと分かった。
名前っちとお菓子、どっちを選ぶかなんて愚問だったみたいっスね。