「あっくん、あっくん!」
「紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちーん。」
両手をあげて紫原を見上げる名前。
まいう棒を口にくわえ、両手を名前の脇下に入れ名前を持ち上げる。そして自分の肩にに乗せ、片方の手で名前を落ちないように固定し、もう片方の手でまいう棒を食べる。
「わーい!たかーい!!」
「紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん、暴れたら落ちちゃうよー。」
これがこの二人の帝光中学までの通学の日常の光景。
「あっ!名前っち、紫っち!」
「あ、黄色!!」
「えっ。黄色ってなんスか!?」
紫原の肩に乗る名前からは黄瀬の頭しか見えず、黄色がいやに目につく。
それ故にとっさに出てしまった言葉だった。
「黄瀬ちん邪魔ー。」
「え!?一緒に学校行かないんスか!?」
「黄色だ!黄色だ!」と騒ぐ名前の腰を落ちないように掴んで、黄瀬より少し早いペースで歩く。
「えー。せっかく紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんと二人なのにー。」
「・・・そ、そんなの寂しいじゃないっスか・・・!」
「そうだよ、あっくん!黄色、かわいそうだよ!」
「ちょ、そろそろ黄色は・・・!」
「えー。でも黄色見てると目痛くなっちゃうよー。」
「ちょっ。」
「そっか。じゃだめだ!あっくん、走ってー!!黄色から逃げろー!」
「おっけー。」
「ちょっ!!」
名前が指さした方向にゆるくだが、黄瀬に追いつかれない程度に走る。
黄瀬はあまりの不意打ちに、一瞬にして二人を見失ってしまった。
「二人とも酷いっスよー!!」
誰もいない道の真ん中で一人叫ぶ黄瀬。その背中には哀愁が漂っていた。
一方、黄瀬からうまいこと逃れることができた二人は、ゆっくり歩きながら二人の時間を満喫していた。
「ね、ね、そのまいう棒私も食べたい。」
「んー、いーよ。」
紫原の食べているまいう棒を口元に近づけられ、一口かじる。
ふんわり、かさかさ、程よい味付けに名前はニッコリと笑った。
「おいしい!」
「ねー。」
学校に着き、紫原の肩から降ろしてもらい、手を繋いで教室まで向かう。
「紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん、ちっちゃーい。」
「あっくんが大きいだけだよ!」
教室のドアをくぐるとき、なんなく通り抜ける名前とは対照的に、頭を少し下げて教室に入る紫原。
その様子を見て、紫原は名前の頭を撫でながらニコニコとしている。
ちっちゃくてかわいーなー。
俺、そのちっちゃいとこも好きなんだよねー。