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「名前さん、ちょっといいですか?」

「うぇ!?・・・あ、う、うん。」

いきなり現れた黒子に驚き、緊張しながらも黒子に促されるままに着いていく。
そうして、屋上へと案内された。


「・・・何か、あったの?」

屋上に着いてから何分か経つが一向に何も話そうとしない黒子を不思議に思い声を掛ける。
心なしかいつもより元気がないように見える。

・・・テツくん、何かあったのかな?
恥ずかしがってる場合じゃない・・!何か、テツくんの力になりたい!!


「私なんかでよければなんでも言って?」

「・・・名前さんは、・・・僕のことが嫌いですか?」

必死に絞り出したのかいつもより小さな声で、震えていた。

「え・・・?そ、そんなことないよ!!」

「じゃあ、なんで避けるんですか?」

「え?」

テツくんを避けた覚えはないんだけど・・・。

私が頭の中で色々考えていると、私が返事をしないことに不安に思ったのか黒子の目にうっすら涙が見えた。

「え!?て、テツくん!?ごめん、ごめんね!!私、避けた覚えはなかったんだけど、テツくんのこと傷つけてたなら謝るから・・・!」

「・・・じゃ、じゃあ、僕のこと嫌いな訳じゃないんですよね?」


私が焦ってそう告げると、まるで黒子に光が差し込んだように明るくなり縋るように名前に答えを求めた。


「うん!もちろんだよ!テツくんは私の、・・大切な、友達だよ!!」


自分でそう言って胸がチクンと傷んだ。


「だから、安心して?」

「そ、うですよね。」

傷む胸に気づかないフリをして黒子に笑いかける。
でも、私はテツくんも悲しい顔をしていたことに気づかなかった。



あれから、結局自分の気持ちは伝えることができないまま休み時間が終わった。

・・・とりあえず、避けられていた訳じゃないって分かっただけでもいいですよね。
それに、大切な友達、と思われていることも分かった。

「大切な友達、なんですね。」

黒子は家に帰り自分の部屋で名前に言われた言葉を思い出していた。

「でも、名前さんにそう思われていたとしても・・・自分の気持ちは伝えたいです。」

そう心に決め、窓を開ける。暗い空には星がいくか見えた。
名前が違う場所だろうと自分と同じ景色を見ているかもしれないと考えるだけで胸があたたかくなった。

窓の外を少しの間見つめ、窓を閉めると上着をはおり、外に出た。

・・・名前さんに会えるとは思ってませんけど、凄く会いたい気分です・・・。

少しの希望を抱いて外を散歩する。



「涼ちゃん?急に呼び出して、どうしたの?」

「なんか急に名前っちに会いたくなっちゃったっス!」

夜、電話に出ると、今から公園に来てほしいと黄瀬に言われ、急いで公園に向かった名前。
公園に着くと一人でベンチに座っている黄瀬がいた。

「それだけ?」

「それだけじゃ、ダメっスか・・・?」

「そういうわけじゃないけど、涼ちゃん、それだけって顔してないから。」

「あー。やっぱ名前っちは凄いっスね。俺のことなんでも分かるし。」


降参というポーズを取り、肩を下げる。そして、名前を不安げに見つめる。

「・・・名前っちと黒子っちがどうなったのか、気になって・・・。」

「なんにもないよ。」

「え?」

「それに、今日テツくんにね、嫌いですか?って聞かれちゃった・・・。」

「・・・。」

「情けないな、私。好きなのに、嫌ってると思われてたなんて・・・。ねぇ、私、どうすればいいかな・・・?」


唇を噛みしめて泣きそうになっている名前の顔を自分の胸にあてる。


本当は、名前っちの幸せそうな顔を見て、二人を祝福して、この想いに踏ん切りをつけようとしていた。
だが、いざ会ってみれば、泣きそうになっている名前。

・・・こんなんじゃ、諦めきれないっスよ・・・!

「名前っち、今だけ、今だけでいいから・・・俺の胸で泣いて欲しいっス。」

それが、黒子っちの為に泣いているとしても。

「ごめん、涼ちゃん。私、テツくんのこと、好きなのに・・・。涼ちゃんに頼ってばっかり・・・。」

黄瀬の服をギュッと握り涙を流す。

本当は、大切な友達なんて、嫌なのに・・・!
気持ちが溢れ出して、黒子が好きな気持ちが胸に広がる。
だが、それと同じくらい黄瀬に対する罪悪感で涙が止まらなかった。

「・・・名前さん?・・・と、黄瀬くん・・・?」
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