「うさぎの人形・・・。」
今、私の目の前にはうさぎの人形が落ちている。汚れが見当たらないのでおそらく今さっき落としたものだろう。
そして、少し先では緑色の髪をした長身の男が何かを必死に探している。
「・・・いや、ないな。」
もう一度うさぎの人形を見て、次に緑髪の男を見る。
例え、この道にうさぎの人形しか見当たらなくて、目の前で男が必死に何かを探しているとしても、この人形が探していたものだなんてそんなことあるわけがない。
だってこのうさぎなんかちょっとファンシーだし。
「・・・一体どこにいったのだよ・・・!」
「・・・。」
どうしよう・・。探し物はもしかしてこれですか?ってうさぎの人形差し出すべきなの?
・・・しょうがない。
「あの、もしかして、ないとは思いますけど一応・・・探し物ってまさか、これですか?」
「・・・!?そ、それなのだよ!・・・迷惑をかけた。恩にきるのだよ・・・!」
うさぎの人形を拾って緑髪の人に声を掛けてみれば、まさかのうさぎの人形の持ち主だった。
いや、でもこの人がファンシーな趣味って決まったわけでは・・・!
「・・・妹とかにプレゼントですよね?良いお兄さんですね。」
「?いや、俺に妹などいないのだよ。」
その希望は一瞬にして砕けた。
「じゃ、じゃあそれは・・・。」
「今日のラッキーアイテムなのだよ。」
「・・・ん?」
「今日のラッキーアイテムなのだよ。」
「・・・・。」
この人、変な人だ・・・!ファンシーな趣味じゃないってことは分かったけど、もういっそファンシーな趣味だった方がよかったんじゃないかってくらい残念な人だ・・・!
「それで、その、名前を教えてはくれないか?」
「え。」
「・・・!そのクマの人形は・・・!?」
名前が名前を教えても大丈夫かどうか思案していると、名前の鞄についているクマの人形を見てこれでもかというほど目を開いた。
・・・確か、今日のおは朝で「今日のかに座の運勢は最高!特にクマの人形をつけている人に注目してね。ラッキーアイテムはうさぎの人形!」と言っていたのだよ・・・!
「あ、じゃあ失礼します。」
「待つのだよ。」
名前を教えるのは辞めておこうという考えに至った名前は、緑髪が固まっている間に逃げようとした。だがそれは叶うことなく、腕を掴まれ元の位置に戻されてしまった。
「はぁ。苗字名前。もう行っていい?」
「緑間真太郎だ。・・・これも拾ってもらったしもし良ければだが、何かお礼をさせて欲しいのだよ。」
「良ろしくないので失礼します。」
「待つのだよ。」
今度こそ、すり抜けてダッシュで逃げようと思ったが、またもや思い通りに行かず。
腕を掴まれて元の位置に戻された。
「なら、せめて携帯の番号を教えて欲しいのだよ。」
「・・・教えたらもう行っていい?」
「ああ。」
名前はしぶしぶ携帯を出した。
◇
「はぁ。やっと帰してくれた。」
とにかく、連絡が来ないことを祈ります。