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「名前っちー!!」

「だからその『っち』ていうのやめて!」


海常高校バスケ部マネージャーの名前は、水道でボトルを洗っていた。
その後ろから、休憩になったのか部員である黄瀬が名前の後ろから抱き着いたのである。

・・・なんで私はこんなうるさい犬みたいな奴に懐かれちゃったんだろう・・・。
毎回私を見るたびに抱き着いてくるし。マネージャーは他にもいるのに・・・!
暑苦しいったらありゃしないわ!!



名前がここまで黄瀬に懐かれたのは、一週間前のことが原因だった。

一週間前


「あ、お疲れ様っスー!マネージャーさん!」

「・・・(誰だっけ)。お疲れ。こっちボトル洗ってるから、そっちの水道使って。」

「ん?って、あれ、いっつもボトル洗ってるっスよね!!こんな暑いのにありがとうっス!」

「別に。」

「冷たっ!!」


名前がボトルを洗っていると後ろから金髪の部員が近寄ってきた。1年生の名前はまだ全員覚えきれていないので、多分1年生だろう。


「ここの水、そんな冷たい?感覚麻痺してんじゃないの。」

「ひどっ!?違うっスよ!冷たいのはマネージャーさんっスよ!!」

「え、私普段からこんな感じだけど・・・。」

確かに暑すぎて放っておいて欲しいっていう気持ちはあるけどさ・・・。

「俺女の子にこんなに冷たくされたの初めてっスよ!?モデルやってるし、こう見えても俺結構モテるんっスよ〜!」

「何そのジョーク。笑えない。」

「って言いながら笑ってるじゃないっスか!!」


変なナルシストに絡まれちゃったな・・・。確かに見た目はカッコイイとは思うけど、中身は残念すぎ。早く洗い終えよう。


「嘘じゃないっスよ!俺、黄瀬涼太っスよ!もしかして知らないんスか!?」

「・・・は?」


知ってる。知ってるよ。モデルの黄瀬くんでしょ。あのー、今人気の。でも・・・これ?
違う黄瀬くんじゃなくて?


「あ、やっと俺の方ちゃんと見てくれたっスね!」

「モデルの黄瀬くんは知ってるよ。でも君は知らないよ。」

「いやいやいや!何言ってんスか!そのモデルの黄瀬くんって俺っスよ!!」

「あの、すごーくモテるっていうモデルの黄瀬くんが、君!?」


バスケ部にいるってことは知ってたけど、誰かは分からずにいて、でもまぁいっかとか思ってたら・・・この人?・・・ただの変人じゃない!!


「っぷ。なんスか、その顔ー!!マネージャーさん面白いっス!!」

「そのマネージャーさんていうのやめて。私は苗字名前。苗字でも名前でもどっちでもいいから、呼びかた変えてくれる?」

「えぇ!?俺がモデルって分かってもその態度っスか!?」

「え、何その自意識過剰。笑えない。」

「ってそう言いながらまた笑ってるっスよ!?」


ボトルを洗い終え、即座に退散しようと急いでボトルを掻き集めると横から手が伸びてきた。


「何?まだ空っぽだけど。」

「戻る場所は一緒なんスから、持つっスよ!名前っち!」

「・・・。やっぱり苗字で呼んでくれない?」

「えぇ!?」


まぁ、持ってくれるならそれで別にかまわないけど。


「って名前っちはや!?」

残りのボトルを抱えていつの間にか体育館に入っていた名前。


「一緒に行こうと思ったんスけど・・・。でも・・・」

こんなにもっと話していたいって思えたのは初めてっスよ。

「・・・っし!頑張るっスよー!!」
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