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「名前さん」

「・・・っうわぁ!!・・・黒子くん」

「相変わらず酷いですね。」

「ごめんごめん。でも丁度良かった!はい。これタオルとドリンクね。」

誠凛高校バスケットボールのマネージャーである名前は、部員にタオルとドリンクを渡し、最後に黒子を探していた。だが、見つからず困っていると後ろから黒子に声を掛けられまるでお化けでも出たかのような声を出して驚いた。

これだけならまだいいが、似たようなことが1日に何十回と起こる。しかも毎回必ず後ろから声を掛けられる為いまだに慣れない。


確かに黒子くんは影が薄いけど、そろそろ慣れないとなぁ。でも毎回後ろから来るんだもん・・・!せめて前からだったら気づくかもしれないのに!



「黒子。お前そろそろ辞めてやれよ。後ろから声掛けられるの本当に心臓に悪いんだからな!」

「いやですよ。名前さんの驚く顔好きですし、何より僕を一生懸命探してるところを後ろから眺められるんですから。」

「ったく。お前、好きなヤツには意地悪するタイプだったんだな。」

「僕も名前さんを好きになってから気づきました。名前さんの泣き顔とか・・・いいですよね。」

今までかつてないほどに生き生きとした黒子を見て、火神は呆れたように溜息を吐いた。


「お前、ガキだな。」

「火神くんに言われたくありません。ちょっとムッとしたのでもう少し大人になります。」

「あ?・・・あ、おい!」

黒子は火神にそう言うと火神が持っていたバスケットボールを奪い名前に近づいた。



「・・・あれ?黒子くんどうしたの?」

「そういえば名前さん前にバスケやってみたいって言ってましたよね。今ちょっとやってみませんか?僕が教えます。」

「え、でも休憩中だし、いいよ今度で。」

「いえ、元気すぎて凄く動きたい気分なので今にしましょう。はい、ボール持ってください。」

「え・・・いつも通り元気には見えないけど・・・。」

半ば強引にボールを渡され戸惑う名前。体育の授業ではバスケをしたことがあるが、基本的には初心者であるため目の前にゴールがあってもうまく入れられる自信がない。


あれ、それに黒子くんシュート入れるのそんなにうまくなかったよね・・・?


「じゃあまずはボールの持ち方ですね。」

黒子はそう言いながら名前の後ろに回り、名前の手に自分の手を重ねてボールの持ち方を教えだした。

「な、な、な!」

「こっちの手はこっちで、こんな感じですね。」

「わ、分かったからっ、手!」

手の定位置が決まってもいまだに手を重ねたままの黒子。名前が慌てているにも関わらず更に近づき名前との距離を縮めていく。


・・・!ボールの持ち方を教えてくれてるだけってことは分かってるけど、手が重なってるよーっ!!しかも距離!近いよっ黒子くん!


「・・・でこんな感じで・・・。って名前さん、聞いてますか?」

手に気を取られているうちに、自分の顔を名前の耳元に近づけ、いつもより低めの声で呟く。


・・・!い、色気・・・!!
あ、あれ!?黒子くんってこんな色気あるような人だったっけ!?


「名前さん。顔、赤いですよ。」

「うぇ!?」

後ろから顔を覗かれ、すぐ目の前に黒子の顔が見える。
とっさに黒子の大きな目を見れば、その瞳には自分が映っていて、自分の顔が林檎みたいに真っ赤になっていることが分かる。


「名前、かわいい。」


・・・!?よ、よ、呼び捨て!?


「わわ、く、黒子くん!!も、分かったから!休憩ももうすぐ終わるし、ありがとう!!」

早口で言うだけ言って持っていたボールを黒子に押し付けた。
その後は目にも止まらぬ速さでリコの背後に回り、服を掴んだ。


「・・・!(か、かわいい!!)」



「おい、黒子!お前、あれはやりすぎだろ!!」

「火神くんがガキだって言うから、大人のやり方をしただけです。」

「いや、なんか違う。ぜってーなんか違う。」

「でも、真っ赤になってプルプル震えてる名前さん。・・・グッときました・・・!」

「お前・・・意外と・・・」

「火神くんと話してる時間がもったいないので次は名前さん驚かしてきます。」

「・・・」

火神の言葉を聞かず、またもや名前の元に向かう黒子。

名前が黒子に驚かされ、涙目になっている様子を笑顔で楽しむ黒子を見て思った。
いや、確信した。

「お前、意外とSだったんだな・・・。」

end
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