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「教室で待ってる、っと。送信!」

放課後いつも、最近部活に励むようになった大輝の練習を見に行っていた。
しかし、大輝目当ての女の子がたくさんいて、彼女である私はあまりいい目で見られていない。
部員の皆も大輝もそんなの気にするなって言ってはくれるけど・・・。

「あの視線が毎日とか、さすがに堪えるよーっ」

だから今日は練習を見に行くのは辞めて放課後の教室で大輝を待つことにした。

メールもしたし、部活が終わるまでまだまだ時間もあるし、寝て待ってよう。



「青峰くん、誰か探してるんですか?・・・あ名前さんですね。いつもいるのに今日はいませんね。」

「ばーか。誰も探してねぇよ。」

「す、すいません!」

声を掛けられるまでキョロキョロと誰かを探すようにしていた青峰だったが、桜井に声を掛けられると何もなかったかのようにして、桜井が持っていたバスケットボールを奪いゴールにシュートを決めた。

あーなんかムシャクシャする。つーかなんでアイツいねぇーんだよ!


「青峰くん、なんかいつもよりプレイ荒いよ!」

「うっせーな。練習出てるだけでもマシな方だろ。」

「そんなんじゃ名前ちゃんにかっこいいとこ見せられないよー!・・・って名前ちゃんはどこ?」

「知るかよ。」


観客席を見渡しても、ベンチを見渡しても名前の姿が見えない。

「もしかして、ついに捨てられたかー!」

「は!?ちげーし!!」

「って青峰くん!どこ行くのー!?」

青峰は持っていたボールを桃井に渡し、体育館から出ようとした。

「今日はさぼるわ。じゃ、あとは頼んだ。」

「えぇ!?ちょっとー!!」


ったく。アイツどこ行ったんだよ。いつもは練習見に来るくせに。誰のために練習出てると思ってんだよ。


「とりあえず・・・教室だな。」

ガラッ

「はぁ・・・。コイツこんなとこで寝てるし。襲われたらどうすんだよ!」


青峰が名前のクラスに着き、中に入るとそこにはぐっすりと眠っている名前がいた。

「おい!テメェ、起きろ!」

ぐっすりと眠っている名前の頭を少し強めに叩き、声を掛けてみる。

「・・・ん、いたい・・・。って大輝!?部活は!?」

「さぼり。つかなんで部活見に来てねぇんだよ!」

「えぇ!?メール見てないの?」


そういえば、携帯はおろか鞄すら持ってきてねぇ。
また体育館に戻るとか、かったりぃ。

「見てねぇ。」

「もう・・・。教室で待ってるってメールしたのに!」

「つかなんでこねぇーんだよ。」

「え、いや、・・・そんなの別にいいじゃん!」

「良くねぇよ。お前が見に来なかったら俺が部活出る意味ねーじゃねーかよ!!」

「いっつもそればっかり!いいじゃん、私が見に行かなくても。他にもたくさん女の子見に来てるんだし。」


理不屈に怒鳴られムッとして青峰から顔を逸らした。

・・・なんか、私ばっかり悪いみたいじゃない・・・!


「なんだよ。お前嫉妬してたのか。」

「・・・なっ!ち、違うよ!」

急に機嫌がよくなったかと思えば、ニヤニヤしながら近づいてくる。

「そーいうことね。ふーん、かわいとこあんじゃん。」

「だからっ、違うってば!」

「そんな顔で言われても説得力ねぇーよ。」

「ーっ!!ち、違うもん・・・。」

自分の顔が真っ赤だってことぐらい見なくても分かるよ!

私はこれ以上顔を見られないように、青峰に背を向けた。
それと同時に後ろから引き寄せられるように青峰に抱きしめられ、さっきよりも顔が赤くなるのを感じた。

「ちょ、ちょっと!!」

「いいじゃねーかよ。こーいうことあんまできねーし、人前だとお前嫌がるし。」

「当たり前でしょ!!」


今まで大輝とは付き合っていたが、そんなに密着することはなかった。
嬉しいという気持ちはもちろんあるが、それ以上に恥ずかしさが上回ってしまう。

ってかここが教室だって分かってるのーっ!?

「俺が好きなのは名前だ。だから、他の女に見られて嬉しいとか思わねぇから。」

「・・・っ!」

「明日からも練習見に来い。お前がいないと調子でねぇ。」

「・・・。」

私が何も言わないでいると、大輝は腕の力を強め、さらにきつく抱きしめる。

今まで大輝がこんなに素直になったことがあっただろうか・・・?
私の記憶では、多分ない。それがなんだかおかしくなり小さく笑った。

後ろを向いて柄にもなく不安そうにしている青峰を見つめた。

「行ってあげてもいいけど、他の子見たら許さないんだから。」

「・・・ばーか。見るかよ。」

end
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