「今日はいきなり呼び出しちゃってごめんね」
「いいっすスよ!むしろ名前っちに呼び出されるならいつでもどこでもオールオーケーっスよ!!」
「・・・ありがとう」
今日は部活が休みのため名前は昨日のことを黄瀬に話そうと電話で呼び出した。
黄瀬は部活だけでなくモデルの仕事もしているので、急に呼び出したところで来れないだろうと思っていたが、まさかの即OKの返事に名前は心配になった。
「電話してから10分しか経ってないけど、学校も家も電車で1時間以上かかる場所になかったけ・・・?」
「愛の力っスね」
「・・・そっか」
もう突っ込むのめんどくさくなってきた。
名前は黄瀬を家に入れ、部屋に入れた。
「飲み物持ってくるからちょっとここで待ってて」
「はいっス!」
名前が飲み物を取りに言っている間一人になった黄瀬は名前の部屋を見渡した。
・・・あの時はウサギの人形を見て、昔を思い出して名前っちにちょっとあたっちゃったんスよね。今思えば今だにウサギの人形持っててくれてるってことは名前っちの中に俺はいるってことで・・・カナリ喜ばしいことじゃないっスか!!
ヤバイ、嬉しすぎて今、絶対みっともない顔になってるっスよ!
「・・・何ニヤニヤしてるの?気持ち悪い」
「名前っち!?(タイミング悪いっスよ!)なんでもないっスよ!!」
「ふーん。まぁいいけどさ。はい、これどうぞ」
「あ、どもっス」
渡された麦茶を手に取り一息つく。
ニヤけた顔を必死に直してウサギの人形を視界に入れないよう名前の方を見た。
「でさ、昨日桐皇高校と練習試合したんだけど・・・そのときにテツくんの彼女に会ったんだ。涼ちゃん、テツくんが付き合ってるかどうか気にしてたでしょ?だから、その報告。無事付き合えてたみたいだよ!」
「・・・え?」
黒子っちが名前っち以外と付き合ってる・・・?
何があったかは分からないっスけど、もしかしてこれってチャンスっスか・・・?
多分名前っちの勘違いだとは思うっスけど、これで名前っちが黒子っちの方に行くこともなくなる?
「そうなんスか。良い感じだったし、そうかなって思ってたんスよ!黒子っちも隅におけないっスね〜」
「・・・うん。なんか涼ちゃん嬉しそうだね」
え、そんなに顔に出てたっスか!?
あぶないあぶない。
「そりゃあそうっスよ!なんてったって黒子っちとは親友なんスから!!」
「やっぱそうだよね。・・・私さ、なんだか素直に喜ぶことができなくてさ。彼女のさつきも凄くいい子なのに・・・」
まだ名前っちは黒子っちのこと好きって気づいてないんスね。
俺の気持ちを伝えるのは今・・・?今なら黒子っちの邪魔もないし、名前っちが黒子っちのこと好きってことに気づく前に言った方がいいっスよねっ!?
「そういうこともあるっスよ!気にする事ないっス!!・・・それより、名前っち。こないだ俺に好きな人がいるって言ったっスよね?そのことなんスけど・・・」
「・・・ん?」
黄瀬は真剣な表情になって名前を見つめた。
「俺が好きなのは、名前っちなんスよ。ずーっと前から好きだったんスよ」
「え?」
涼ちゃんが、私を好き・・・?
「だから、名前っちが黒子っちのこと名前で呼んだ時嫉妬して苦しくなったりとかしたんスよ?」
「・・・苦しく?」
涼ちゃんも同じ・・・?
「そうっスよ!!・・・絶対名前っちを幸せにするっス!!だから俺と付き合って欲しいっス」
涼ちゃんとは今まで一緒にいたけど、そういった目で見たことはなかった。
それに、今私の頭に浮かんだのはテツくんで・・・。
そっか・・・。私、テツくんのことが好きなんだ。
テツくんと一緒にいて嬉しかったのも、さつきとテツくんが一緒にいて苦しくなったのも、全部テツくんのことが好きだったからなんだ。
「・・・ごめん。涼ちゃん、私、涼ちゃんとは付き合えない」