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「さっそくだけど、今日は桐皇学園高校と練習試合をするわよ!」

「「「・・・は!?」」」

部活が始まった途端リコは腕を腰にあて、堂々と言い放った。

「いやいや待て。そんなこと聞いてないけど!」

「今言ったんだから当たり前でしょ。多分、そろそろ来ると思うけど・・・」

「・・・桐皇学園高校って強いのか・・ですか?」

変な敬語を使いながら火神が聞くと、リコは待ってましたと言わんばかりに語りだした。

「ええ!なんてったってキセキの世代がいるところだしね!・・・そんなとこと練習できるなんて・・・!あぁ、もう最高!!名前ちゃん!今日はたくさんメモってもらうと思うから、よろしくね!」

「はい!頑張ります!!」

リコはキラキラと幸せオーラをだしていたが、部員たちは今にも死にそうな顔で近づける雰囲気ではなかった。
ただ、火神だけは楽しそうに笑っていた。

「(・・・青峰くんのいる高校ですね。となると・・・黄瀬くんの時みたいに穏便にはいかなそうですね。)」


ガラッ

「やっと着いたか」

「テツくんーっ!!会いたかったー!」

がばっ

体育館のドアが開いたかと思えば色黒の青い髪をした男が立っていた。
そしてその後ろからピンク色の髪をした女の子が黒子に向かって走りそのまま抱きついた。

「「「・・・え!?」」」

その場にいる全員がその状況についていけず、目を丸くして黒子を見た。


「テツくん!久しぶり!!元気だった?」

「はい。元気でしたから、離してください」

黒子に抱きつき話しかける女の子とは裏腹に、黒子は無表情の顔を歪めて逃れようと必死にもがいていた。

「ちょっと待ちなさい。アンタ、黒子くんのなんなの?(胸大きい・・・)」

あの黒子に女の子が抱き着いているというあまりにも衝撃的な光景に、誰も口を出すことができなかったが、リコだけは違った。

「テツくんの彼女です!」

「・・・はぁ!?(名前ちゃんが好きなんじゃなかったの!?)」

「違います。嘘言うのやめてもらえませんか」

「一体どっちなのよ!?」


彼女・・・。涼ちゃんが言ってた子ってこの子のことなのかな。
やっぱり彼女いたんだ。涼ちゃんが言うくらいだしね。


名前は無意識に黒子達から目を逸らし、青い髪の男を見た。
その時偶然にも青い髪の男と目が合った。

「・・・あ。お前・・・(どっかで見たことがある気がする)」

「?」

「あぁ!!思い出した!お前、あん時試合に来てた奴か!すげぇ偶然だな」

「・・・えっと、ごめんなさい。どなたでしたっけ?」

「青峰大輝、覚えてねぇか?お前、帝光中の試合見に来てただろ。そん時ちょっと話したじゃねぇか。」

帝光中の試合・・・。

名前は歓声が沸いた会場をじっと見た。
中では帝光中が試合をしている。相手の高校はよく分からないけれど。

「どうしよう。でも、せっかくここまで来たし・・・」

私は涼ちゃんに会いに来ていた。
メールが来ても返事はしていないし、中学もどこに行ったのか内緒にしていた。
そのことに少なからず罪悪感を感じていたし、何より、自分で距離をつくっておきながら少し寂しいと感じていた。

そんな中、涼ちゃんがバスケ部に入ったという噂を聞いた。
そして今日この会場で試合をしている。


「少し見て、それで帰ろう」

私はギュッと手に持っている手作りのクッキーを握り、会場に入った。そして、席には座らず選手から死角になる場所でこっそり見ていた。


バスケをしている時の涼ちゃんはすごく楽しそうで、私がいなくても元気でやってるんだ、ってそう思った。でも、そう思うとなんだかちょっと悲しくなって、私は試合が終わったにも関わらずずっとそこにいた。


「何しに来たんだろ、私」


「試合見に来たんじゃねぇのか?」

「・・・わっ!」

いつの間にか知らない人が後ろに立っていて、声を掛けられた。

「ま、試合は俺の圧勝だけどな!」

「あ、選手の人ですか・・・。(涼ちゃんしか見てなかったよ)」

「選手の人ですかって・・・。お前、試合見てたのに俺のこと気づかなかったのかよ。・・・俺結構得点入れたんだけど」

「ご、ごめんなさい」

でもなんで私はこの人に話しかけられたんだろう・・・。試合が終わったのにずっとコートを見ている人も珍しいかもしれないけどさ。

「で、なんでそんな泣きそうな顔してんだ?もしかして負けた方応援してたのか?」

「え・・・。(泣きそうな顔してたかな)あ、いえ。それより、なんで急に話しかけてきたんですか?」

「さぁ。なんとなく」

「・・・暇なんですね」

「はぁ!?違げぇし!・・・あ、それクッキーか?ちょうど腹減ったし、それよこせ」

「・・・(横暴だなぁ)まぁ、いいですけど」

そういえば、クッキー作ってきたんだった。涼ちゃんに会うつもりなんてなかったのにね。

「お!結構うめぇじゃん」

「どうも」

色黒で背も高い人が小さなクッキーをもぐもぐ食べている様子がなんだか可笑しくなり、名前は小さく笑った。

「お前、笑ったら可愛いな」

「・・・え」

「あ・・・。(無意識に声に出てた)」


ってか俺もなんでこいつに声掛けたんだ?いつもなら面倒なことはしないのに、なんでこんなに気になったんだ?
しかも、可愛いとか・・・。そんなこと俺が思うとかありえねぇ!!

「いや、その・・。(なんだこの気まずい雰囲気は!!)あ、そういやお前名前なんていうんだ?・・・て、いねぇし!?」



「さっきの人に悪いことしたかな・・・。でも、後ろから涼ちゃんの声が聞こえたから、走って逃げちゃった。なんか言ってたけど・・・まぁ、いっか!」

青峰が名前と話している間、急にいなくなった青峰を帝光中の部員が探していた。
そして、ちょうど青峰が色々と考えていた時黄瀬が近くを通りかかり、その声を聞いた名前は青峰を放置し、逃げていた。


「青峰っちー!やっと見つけたっスよ!何してたんスか!?」

「あ?いや、別に」

「別にってなんスか!?答えになってないっスよ!?・・・ん?それ、クッキーっスか?」

青峰の手元を見ると残りわずかとなったクッキーがあった。

「そうだけど、やんねぇよ」

「えーっ!酷いっス!!」

この後、青峰と黄瀬はさんざん怒られ、1週間の練習メニューが地獄だったとか。
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