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「なんかお前、積極的になったよな。最初は話すのもやっとだったのによ」

「そうですか?・・・まぁ、やっかいな幼馴染が出てきましたしね。負けたくないんで」

練習着に着替えながら火神は少し前の黒子を思い出していた。

あの頃の黒子は、話もまともにできなかったし、やっと話せたと思ったらすぐに赤くなるしで・・・本当に初心(うぶ)な奴だった。だが今はどうだ、あの黄瀬と張り合うくらいになって・・・。

成長したな。

「ならよ。そろそろ名前で呼びたいとか思わないのか?今のままだと、まずその時点で黄瀬に負けてねぇか?」

「分かってますよ!でも、なかなかタイミングを掴むことができないんですよ。こないだは黄瀬くんがいましたし」

「どうせ今日も帰り送ってくんだろ?じゃあ、そん時にでもいいんじゃねぇか?」

・・・ただ、苗字呼びに慣れてしまったので、名前で呼ぶというのはちょっと・・・というかかなり勇気がいるんですよ!

「そうですね。頑張ってみます」


「集合ー!!」

監督の声が聞こえ、部員は体育館の中央に集まった。

「今日から名前ちゃんも一緒に頑張ってもらうから。よろしくね!じゃあ、まずはスコアを書いてちょうだい。私が言った事をこれに書いてくれればいいから」

「はい!分かりました」

渡されたノートとボールペンを手にリコの後ろで書く準備をしだした。
そこからは部員が試合形式の練習をし、リコが一人一人の足りない部分を指摘し、名前がそれをメモっていった。


「はい、じゃあ休憩!!」

「あっ。これタオルとドリンクです!」

「おお!サンキュ!」

休憩になるとまずは日向からタオルとドリンクを渡し、他の部員にも渡していく。

「お疲れ様、黒子くん!はい、これどうぞ」

「ありがとうございます(苗字さんから受け取れるなんて・・・!やっぱりマネージャーになってもらえて良かったです)」


「名前ちゃん、こんなに書いたのか!すっげーな。なになに、俺の弱いとこは・・・っと」

「あ!俺も見たい!!」

名前の書いたノートに部員が集まり、皆真剣な表情で確認していた。

「いつもは口で言われるだけだったからな。こうやって確認できるとやっぱいいな!ありがとな名前ちゃん!」

「いえ!そんな!(日向先輩に誉められた!!)」

「はい。こうやって確認できると便利ですね」

「黒子くんも、ありがとう!」

照れているのか控えめに笑っている名前が可愛くほのぼのとした時間が流れた。
だが、火神だけは不思議そうな顔をしていた。

「あの日向先輩は苗字のこと名前で呼んでるんだ・・ですね」

「あ・・?そーいえばそうだな。まぁ、細かいこと気にすんなよ。なあ?名前ちゃん」

「はい!構いませんよ。好きに呼んでもらって」

そこ言葉を聞いてパッと黒子の周りに花が咲いた。

「じゃ・・「なら俺も名前ちゃんって呼ぶー!!」・・・」

「あの、じゃあ「俺も名前で呼ぼうかな」・・・」


・・・なんで僕が喋ろうとすると被せてくるんですか!!

黒子は元からあまり声が響かない為、他の人に被せられてしまうとまったく聞き取れない。そのせいか名前にも気づいてもらえずにいた。


小金井先輩、伊月先輩・・・覚えといてくださいね。

「「(なんか寒気が・・・!?)」」


「はい!じゃあ、私も先輩は今まで通りで呼びますけど・・・黒子くんはテツくんで、火神くんは大我くんって呼んでもいいかな?」

「はい!もちろんです!!あと、僕も・・名前さんて呼びます」

・・・やっと言えました!なんか、恥ずかしいです。ただ、火神くんも含まれてることはちょっと不満ですけど。

「俺も別にいいぜ。(俺も苗字を名前で呼ぶべきなのか?)」



練習も終わり、今日も黒子と名前は一緒に帰っていた。

「テツくん。いつもありがとね!疲れてたりとかしてない?大丈夫?」

「(名前・・・!)はい。大丈夫です。それに名前さんが応援してくれるので疲れとかなくなりますし」

黒子は名前の応援している様子や、必死にノートに書き込んでいる様子が頭に浮かび小さく微笑んだ。

「・・・あ、ありがとう!」

あ、あれ?なんか・・・一瞬ドキってした。なんでだろう・・・?

「・・・?どうしたんですか?」

「え、ううん。なんでもないよ!あ、じゃあ、ありがとね!」

「?はい!(名前さん、ちょっと挙動不審でしたけど大丈夫ですかね?)」



「なんでだろう・・・。最後テツくんの顔、見れなかった。折角送ってくれてるのに、悪いことしちゃったかな・・・。」

名前は真っ先に自分の部屋に入るとベットに飛びこんだ。
お気に入りのウサギの人形を抱え、さっきのことを思い返していた。

「でも・・かっこよかったなぁ・・・笑った顔、初めて見たかも」

って何考えてるんだ!私は!

「もう!考えるのはやめ!お風呂入ろう」

名前は自分で言って恥ずかしくなり、赤い顔を隠すように風呂場に駆けて行った。
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