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「お前、今日の帰り苗字を誘え」

「無理です」


部室で練習着に着替えていると急に火神が無茶なことを言いだした。

「ちゃんと喋れませんし、会話が続きません。それに僕と帰っても苗字さんつまらないですよ」

「・・・(やっぱ二人はキツイか?)苗字はお前と話したかったって言ってなかったか?なら、つまらないってことはないんじゃねーか」


確かに、苗字さんはそう言っていました。でも、苗字さんは優しいからそう言ってくれただけかもしれないじゃないですか・・・!


「それに、苗字さんはいっつも友達と見に来てるじゃないですか。その子はどうするんですか」

「・・・(忘れてた)まぁ、俺がなんとかしてやるから。ごちゃごちゃ言ってねーで誘ってみろ!んでメルアドでもゲットしてこい。お前そんなんでも一応男だろ!」

「失礼ですね。一応じゃなくて、ちゃんと男ですよ。分かりましたよ、言うだけ言ってみます」


練習着に着替え終わり、体育館に向かう。


「・・・あ!火神くんと黒子くん!」

体育館に着くと既に名前はいたようで、二人に向かってニコニコと手を振りながら近づいた。

「苗字!?お前、早えな。・・・ん?いつもいるやつどうしたんだ?もしかして今日一人か?」

「あーうん。ホントは来る予定だったんだけど、彼氏と会うーとか言って帰っちゃった。独り身の私を残して行っちゃうなんて酷いよね!」


・・・これってチャンスなんじゃねーか!?しかも苗字には彼氏がいないっていう情報までゲット!よし、黒子いけ!さっき言った事を今実行しろ!!

火神は無言で黒子を前に押しやり、さっき立てた作戦を実行するよう促す。


「・・・ゴホンっ」

それでも黒子が無言でいると、火神はワザとらしく喉払いをし、黒子を睨みつけた。

「・・・・苗字さん。・・・良かったら、今日僕と帰りませんか?」

・・・い、言えた!!

「え?あ、気遣わせちゃった?私一人でも大丈夫だよ?」

「い、いえ!そんなじゃなくて、僕が苗字さんと帰りたいと・・・おも・・って」

って僕は何を言ってるんだ!気持ち悪いとか思われたら立ち直れる気がしませんよ!!

「あ・・じゃあ、お願いしようかな。ありがとう」


ニコッと名前に微笑まれ、何が起きているのかいまいち分かっていない。
そんな中、監督の集合ー!!という声が聞こえた。


「監督呼んでるよ。練習、頑張ってね!」


名前はそう言うと、体育館の二階に登って行った。
黒子はというと、火神に連れられ監督の元へ。


「ん?黒子、お前大丈夫か?」

日向に話しかけられるも無視。というよりも声が聞こえていない。

「・・・大丈夫じゃなさそうだな」


ボーっとしていた黒子も練習が始まるとだんだんといつもの調子が戻りつつあった。
しかし、名前に見られているという緊張からかいつも以上にシュートが入らない。

今日の帰り、苗字さんと二人きり・・・!どうすればいいんでしょうか。何の話をすれば・・・?
絶対、話続きませんよ!やっぱり無理ですよ!・・・でもありがとうって言われました。


練習中にもかかわらず黒子はピンクのオーラを放ち、幸せに浸りだした。そのせいで、ミスディレクションが解け、パスをカットされてしまった。

「・・!ったく。苗字見てんだから、しっかりやれ!!」

名前に聞こえないくらいの声で黒子に言い、ゴンッと頭を殴る。

「・・・痛いです」



練習も終わり、黒子は名前の所に向かうか、着替えるかで体育館の真ん中でウロウロしていた。

「(・・・あいつなにやってるんだろう)」

またもや日向に心配されていた。


「ったく。黒子!苗字に着替えるから外で待ってろって伝えて来い。俺は先に着替えてる」

「・・・!はい!」


火神に背中を押され、その勢いに任せて名前のもとに向かった。

「・・・苗字さん!」

予想以上に声が大きく自分なのに驚いた。名前もそうなのか少し驚いたような表情で黒子を見つめた。

「僕、着替えてくるので、外で待っててください!すぐに行きますから」

「うん!わかった。待ってるね」


クルッと向きを変えると黒子は小走りで去って行った。

「・・・で、火神くん。僕は苗字さんと何を話せばいいんでしょうか?」

いつもより急ぎめで着替えながら、既に着替え終わっている火神に尋ねた。

「お前が話したいこと話せばいいじゃねーか。例えば・・・」

「ちょっと待ちなさい」


顎に手をあて考える姿勢をとっていた火神を押しのけ、リコがニヤニヤしながら押し入ってきた。

「恋愛のことなら私に任せなさい!!そうかな〜とは思ってたけど、やっぱりアンタあの子のこと好きだったのね!毎回あの子が来る度に黒子くんのミスディレクション鈍ってたしね」

「・・・ってまだ俺話してるんですけど!?」

「そうね、まずはやっぱりアドレスね。そこは必ず押さえなさい!次に、好きなものを聞くのよ!そこから発展して、デートまで持っていきなさい!よし、そうと決まれば早く行く!女の子待たせちゃだめよ!」

「俺は無視!?」

早く、早くと黒子を押し出し、何か喋っていた火神は放置。
丁度着替え終わっていた黒子は鞄を持たせられると体育館から追い出された。

「・・・好きなもの・・ですか」
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