「名前っちー!今日は夜ご飯作ってくれる日っスよね!?ちゃんと覚えてるっスか!?」
「うん。ちゃんと覚えてる。覚えてるからそんな引っ張んないでー!」
部活の帰り道、名前の服を早く早くと引っ張りながら歩く。
「ずっと楽しみにしてたんスよー!!だからもう毎日作りに来てくれればいいんスよ!!もう住み込みでもいいっスよ!?」
「いやいや、何言ってるの!!」
楽しみにしてくれてるのは嬉しいけど服が伸びる・・!
ブーブー
「ん?涼ちゃん携帯鳴ってるよ?」
「あ、ホントだ。・・・ちょ、ちょっと待ってて!」
名前の服から手を離し少し離れて電話に出る。
ああ、仕事かな?なんてボーっとしながら涼ちゃんの背中を見ていた。
目線を少しずらせばオレンジ色の夕焼けで目がチカチカした。
涼ちゃん最近仕事多いな・・。
でも、夜ご飯くらいいつでも作りに行けるしね。別に今日じゃなきゃいけないって訳じゃないし・・。
涼ちゃんの顔がだんだんと歪んでいくのが分かって、仕事だと確信した。
「・・・あの、名前っち・・」
「そんな泣きそうな顔しない!・・・仕事でしょ?行っといでよ。夜ご飯ならまたいつでも作りに行ってあげるから。」
「うぅ・・。なんでまた仕事が・・。しかも今すぐって・・。俺行きたくないっスよ・・。」
「我儘言わない!・・・それに私仕事してる時の涼ちゃんも好きなんだよ?・・・じゃあ、明日!明日夜ご飯作りに行ってあげるから!・・・ね?」
私がそう言うと、渋々ながらもこくりと頷いた。
「仕事今すぐなんでしょ?送るのはここまででいいから、行っといで」
普段黄瀬の家に寄らない時は必ず名前の家まで送っていた。
でも、私の家まであと少しだし迷惑掛けたくないからね。
「・・・わかったっス。名前っち本当にごめんっ!・・・それじゃあ明日楽しみにしてるっス!!」
「うん。じゃあ、また明日」
そう言ってお互いに背を向けて歩き出した。
「・・・」
少し歩いて、でもやっぱり寂しくなって後ろを振り返る。
そこには名前っちの後ろ姿。まだ走ればすぐに触れられる距離。
また前を向いて歩きだそうとしたが、ちょうど目線に夕日が入りその眩しさに足を止める。
早く仕事に行かなきゃいけないのに、止まった足は前に進まなかった。
凄く嫌な予感がする。
今ここから離れちゃ駄目だ。名前っちから離れちゃ駄目だ。
なぜだかそう思って急いで名前っち追いかける。
その時横目に車が見えた。
俺の横を凄いスピードで走って、いとも簡単に俺を追い抜く。
俺のスレスレを通り過ぎた車は、そのまま俺の目の前にいる名前っちへと向かう。
「っ名前っち!!!」