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「名前っち!」

「ん?涼ちゃんどうしたの?」

「名前っちに聞いて欲しことがあるんスよ!!」

「え?今?」

休み時間が残り1分もないだろうという頃。名前は教科書を出したりと次の授業の準備をしていた。

「今っス!!今名前っちに伝えなきゃダメなんスよ!」

「あー、うん分かった」

断ろうと思ったが、黄瀬の必死の形相に断ることができなかった。
まぁ、1時間くらいならいっかな・・?





「で、そんなに急いでどうしたの?」

「えっと、その・・」

黄瀬が喋ろうとして授業開始のチャイムが鳴り黙ってしまう。
ああ、もうなんでこんなにタイミング悪いんスか・・!!

「1時間もあるし、ゆっくりでいいから」

名前にそう言われ焦っていた気持ちがだんだんと和らぐのを感じた。

「俺・・・名前っちが、・・・名前っちがどこかに行っちゃうんじゃないかって凄い不安なんスよ・・。俺だけ残して名前っちがどこかに行っちゃうって、そう考えると怖くて怖くて・・。」

「え?」

なんで急にそんな発想に・・?

「でも、それを青峰っちに言ったら、それは俺が名前っちのこと本当に好きだからだって。本当に大切だから、失うのが怖いんだって言われんスよ。・・・でも、それでもやっぱり、名前っちがいなくなるかもしれないっていう不安が消えなくて・・」

「・・・涼ちゃん、ばかだなぁ」

本当馬鹿だよ。涼ちゃんだけが私を好きな訳じゃないのに。私だって涼ちゃんのこと大好きなのに。
そんなこと言われたら私だって怖いよ。涼ちゃんを失うことが怖い。

「私だって、涼ちゃんのこと本当に好きだし凄く大切な存在だと思ってるんだよ?それなのに涼ちゃんの前から消えるなんてこと、あるわけないでしょ?」

「名前っち・・」

「じゃあさ、約束しようよ!私は涼ちゃんの前から勝手にいなくなったりしないから、涼ちゃんも私の前から勝手にいなくなっちゃだめ!そしたら安心でしょ?針千本も飲むの嫌だもん」

「あはは。俺もそれは嫌っス。それがなくても離れる気なんてないんスけど、約束っス!」

小指を絡ませて歌を歌う。
これで安心だね、って笑い合って授業終わりのチャイムが終わるまでずっと二人でいた。





「青峰っちー!!1on1ー!!」

「・・・ったく、しょうがねぇなー」

「そんなこと言いつつも嬉しそうっスねー!!」

「は?お前調子乗んな」


軽く黄瀬の頭を殴りコートに向かう。
少し前の黄瀬と同じ反応に、やっと戻ったかと安心し黄瀬に見えないように微笑んだ。


「青峰くんったら、涼ちゃんには見えなくても私には見えてるよ」

「うわっ青峰くんが笑ってるー!めずらしー!」

「桃ちゃん!?」

あれ!?さっきまで結構遠くにいたような気がしたんだけど!?

「えへへ。名前ちゃんが楽しそうだったから来ちゃった!きーちゃんも元気になってるし良かったー」

そう言ってほほ笑む桃井に胸が暖かくなるのを感じた。
桃ちゃんも心配してくれてたんだ・・。

「ありがとう」

桃ちゃん、青峰くん。
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